特別対談 高城剛×石田衣良「これからの出版はライブと同じ」

 

石田日本の出版業界は、もうずっと縮小を続けているんですが、業界が縮小していく状況に関して、高城さんだったらどういう提案をなさいます? みんなで悩んでいて、何にもできていないっていうのが、現実のところなんですが。

高城:僕は出版社自体の未来はあんまり考えてません(笑)。僕は、自分個人が出版社みたいなもんじゃないですか。ですから石田さんなら「石田出版」っていうものになるんじゃないでしょうかね?

石田:そっかぁ。でもそれをやるとな……。今の出版の生態系って、とても気持ちがいいものじゃないですか。みんなでバカ話して、お酒を飲んでと。

高城:わかります。僕も好きですよ、そんな古い世界も。

石田:何とかそれを、もうちょっと守れたらいいなぁ、と思うんですけどね。

高城:でも限界がありますよ。これが10年続くとは思えない

石田:確かに思えないです。次の消費税増税のタイミングが分水嶺ですね。前回、消費税が上がった時も、ガクッと販売が落ちていましたから。

高城:今の大手総合出版社では、マンガ雑誌の収益が書籍を上回ってますが、その雑誌自体は完全にダメになっていくメディアですよね。あるジャンルの1位か2位の雑誌しか残らなくて、3位以下は全部淘汰されてしまうでしょう。しかも広告主のための本作り。だから、出版社の未来って、本当は書籍にかかっていると思うんですよ。ただそれが、価格を守ったり古いシステムを維持していたりする間は、とても良くなるとは思えません。

石田:そうかぁ。やっぱり、どこかで壊れる時期は来ないといけないのかなぁ。

高城:そう思いますね。音楽業界だってそうだったじゃないですか。あっという間に変わる。

石田:音楽業界は阿鼻叫喚ですもんね。傍から見てると何だかかわいそうで。

高城:アーティストが真剣に歌ってるかどうとかはさておき、産業構造としておかしくなってますよね。ところが世界的に見ると、音楽市場って伸びているんですよ。

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石田:なるほどなぁ。でも音楽業界全体が伸びていても、個々のアーティストの生活って、昔みたいなメガヒットはないので、結構下がっていますよね?

高城:ただ世界的に見ると、ライブなどの収入益がものすごいわけですから。結果、多角経営をしているので、昔のアーティストより稼いでますよ。DJなんかが典型です。

石田:そう、そこなんですよね。要するに小説家の場合はライブはないじゃないですか。

高城:僕は講演会をやってますね。

石田:あぁ、講演会ね。ただ講演会って、できる人とできない人がいるからなぁ。

高城:講演会といっても、作家が壇上で話す今までの講演会とちょっと違うんです。いい言葉がないから、講演会と例えていますが、実際は読者と共有する場のようなもので、ライブのようなものなんです。僕は出版業界や映像業界って、音楽業界に10年とか20年くらいビハインドしている気がします。

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