石田:それはありますね。
高城:音楽業界の人たちのほうが進んでいますね。かつてCDを産業の中心に置いていた時には、ライブの方はプロモーションと捉えていて、赤字でも良かったんですよ。CDが売れればOKで。僕が今やっていることもそれと同じような感じで、講演会やるときは赤字でもいいんです。読者とともに良い体験することだけを考えています。
石田:なるほどね。でもそういうことは、そのうち作家も握手会、握手券付きの本を出すようになるのかもね(笑)。
高城:握手券まではわかりませんが(笑)。方向は共有感があるライブに向かうでしょう。最近、若い読者と話していて気づいたことがあるんです。たとえば今日こうやって石田さんと1対1で対面すると「お会いしました」と僕は感じます。ところが、若い読者が石田さんの講演会に行くと、会場に500人ぐらいの参加者がいたとしても、彼らは石田さんと「会った」って言うんですよね。
石田:ほほう。つまり生を見ればいいってことなんですね。
高城:時代は、想像以上にインターネットの力が大きくなってきてるから「会う」「ライブ」「生」というモノの価値観が想像以上に高くなってきてるんですよ。これをいかに提案できるかっていうのが、物書きの人たちのこれからの使命だと思います。別に講演会に限らず。マイケル・ジャクソンの「スリラー」以降、音楽は聞くものではなく、見るものになったのと同じで、時代は移り変わると思いますね。
石田:そういえば、堀江(貴文)さんと対談した時も、要は会う経験とか読者と作家を結びつける機能を、今の出版社はまったく果たしていないということを言われて「ああー」と思ったんですね。それは今も同じ点をついてますよね。ところで、高城さんの講演会はどんなところでやるんですか?
高城:昨年はトークライブを渋谷公会堂でやりました。
石田:どんなことをやるんですか?
高城:ただ話すだけです。
石田:どれくらいしゃべり続けるの?
高城:1時間半です。2500人の客を相手に1時間半、僕ひとりでしゃべります。
石田:なるほど。講演会のネタは決めてないんですよね?
高城:書籍が出たタイミングだったので、それに基づいて「旅は人を幸せにするのか?」というテーマにはしていました。一応、そういうタイトル、というか向かう先はあります。
石田:でも、実際は脱線、脱線になるんですか?
高城:脱線っていうかライブです。出てから考えながら話します。
石田:そうか。でもそれにハマるとすごい楽しいですよね。
高城:楽しいですねぇ。はじまる前の選曲まで自分で、現場で会場の雰囲気を見ながらやっていました。音楽をかけながら盛り上げていって、僕が自分で出るっていう。
石田:おー。じゃあ“作・演出:全部自分”って感じですね。
高城:スタッフがいないだけですよ。
石田:でもそうなると渋谷公会堂はすごく大変じゃないですか?
高城:そんなことはないですよ。入場無料にしたので、チケットは販売しませんから、お客さんを入れるだけじゃないですか。だから手間ヒマがそこまでかからないんですよ。
石田:ガードマンとか警備員とかもいらない?
高城:開場前に何百人もお客さんがいらしたので、それを整理する人はお願いしました。当日予想以上に早くお越しになる方々が多くて。
石田:1人でもそれくらいできるんですね。