「パワハラ」と聞けば、十中八九の人が「上司から部下」へのものを想像すると思います。しかし今、じわじわと増加中なのがこの真逆、つまり「部下から上司」へのパワハラです。会社からの評価を気にするあまり他人に相談できないケースが多いというこの「逆パワハラ」について、メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』が詳しく解説しています。
「上司から部下」だけがパワハラではない
以前に話題になった「上司が鬼とならねば部下は動かず」という本があります。その詳しい内容については割愛しますが、「上司が鬼」というだけで、みなさんも大体の内容は予想がつくのではないでしょうか。
ここで1つ気になるのが、もし上司が鬼になった場合の危険性です。注意して鬼にならないと、パワハラの問題に発展しかねません。
そして、もう1つ気になるのが「鬼になるのは上司だけなのか?」という点です。パワハラというと、多くの人が「上司が部下に行うもの」と考えているかも知れませんが、実は違います。「部下から上司」もパワハラになりえるのです。実は、これが最近増えてきています。
「部下から上司」というとイメージがつきづらい人もいるかも知れませんが、例えば次のような場合です。
・集団で上司を無視する
・業務の指示に意図的に従わない
・上司個人の身体的特徴に対し侮辱した言い方をする
これらは、上司が気が弱い性格である場合や部下のほうが社歴が長い場合などに特に起こりやすい傾向があります。特に後者は、年功序列が当たり前の時代では職位と社歴が比例していたためあまり問題にはなりませんでしたが、評価が年功序列から成果主義に変わり、転職も普通になった今の時代にはどの会社にも可能性のある状況でしょう。
また、もう1つの要因として、「上司から部下へのパワハラ」に対する過剰な反応があります。パワハラという言葉に過剰に反応することで上司は必要なことも言えなくなり部下は些細なことまでパワハラと言い出し精神的な立場が逆転するような環境ができてしまったのです。
これらが部下から上司へのパワハラが増えている原因です。そして、この部下から上司へのパワハラは深刻な問題になる危険性も高かったりします。それは、問題が中々表面化しづらいからです。
パワハラをされている上司は、自分のマネジメント能力の不足をその原因と考え、自分の評価に響くことを心配して会社に報告したがりません。また、その直属の上司に相談しても「部下のことは自分でしっかりやれ」と言われるばかりで、その手助けになってもらえないというケースも多くあります。そして、悩みに悩んだ上司はメンタルに支障をきたしたり自らの限界を感じ、退職してしまったりするのです。
これでは、せっかくの有能な社員をつぶしてしまうことにもなりかねません。
では、会社としてどうすべきか?まずは、部下のこれらの行為をその上司のマネジメントだけで解決させようとせず会社として対応することです。
例えば、上司の指示に従わないということは服務規律違反です。その程度によっては、懲戒処分の対象にもなりえます。それを会社としてしっかりと示すのです。
また、部下からの行為もパワハラになりうることを社員全員で共有することも必要でしょう。正しい知識を共有するだけでも、その行為の一定の抑止力になります。
パワハラ上司から部下を守ることもパワハラ部下から上司を守ることもどちらも会社にとっては大切なことなのです。
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