香港で中国の言論弾圧が本格化。次のターゲット・台湾はどうなる?

 

冒頭に述べたように、中国は台湾での言論統制にも乗り出すことを企んでいます。馬英九政権時代には、旺旺(ワンワン)グループのような親中派の台湾企業による台湾メディアの買収が相次ぎました。また、東森テレビをはじめ、台湾メディアを買収しようとする中国企業の動きも活発でした。これらに対して、台湾国内では大きな懸念と反発を招いてきました。

そもそも台湾でも戦後、長きにわたり言論弾圧が行われてきました。いちばん有名なのは、柏楊(ポーヤン)氏が漢訳したマンガ「ポパイ」の1コマで、蒋介石を風刺したとして逮捕、国家元首侮辱罪として死刑を求刑されたこともありました。

こうしたことは、中国共産党や国民党だからではなく、中国人である以上、「世の中はすべて1つしか許されない」という文化伝統なのです。禁書、禁演、禁唱は中国人の人生そのものなのです。中国のネットでも「独立」をはじめ、検索が禁じられているキーワードは山ほどあります。

台湾では李登輝総統時代の1996年から総統選挙が国民投票によって行われるようになり、それにともない国民の「台湾人意識」が強まっていきました。今年1月16日の国政選挙で民進党が大勝したのは、これまで不正選挙や賄賂汚職などあらゆる悪事に手を染めてきた国民党を民衆が見放したからです。

そして、総統選挙に勝利した蔡英文は、台湾の自由と民主主義を訴える選挙戦を行い、当選後には「台湾すなわち民主主義であり、民主主義すなわち台湾である」と述べました。中国が言論弾圧を強めるなかで、彼女の総統就任は、非常に大きな意味を持ちます。

香港の「雨傘革命」は台湾の「ひまわり学生運動」に触発されたものでしたが、台湾の蔡英文総統誕生は、中国による香港の支配強化を見た台湾人の危機意識によるものだったとも言えます。

馬英九路線を継続していれば、早晩、台湾も香港と同じ状況に陥っていたことでしょう。しかし、これに対して台湾人はNOを突きつけたのであり、中国による台湾の言論支配は失敗に終わるでしょうし、そうさせなければなりません。

重要なのは、このことは台湾一国のことだけに留まらないことです。香港での言論規制が強まるなかで、台湾は中国語圏で唯一、民主主義と言論の自由を守り、勝ち取ったということでもあるからです。だからこそ中国人が台湾で「禁書」を買い求めるわけです。

つまり台湾は、中国語圏で残された唯一の希望だとも言えるのです。加えて、蔡英文が今後の台湾をどのように作りなおすのかということは、対中国や対アジアのみならず、独裁国家に対して民主主義国がどのように対峙していくのかという、世界的・普遍的な問題でもあり、そのモデルケースでもあるのです。

続きはご登録のうえお楽しみください(初月無料です)

 

 

黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
<<無料サンプルはこちら>>

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け