なにが米議会を熱狂させたのか? 安倍首相演説の全文を徹底分析

 

安倍総理は、「アメリカ大好き民主主義者」であることを宣言した

安倍演説について、中韓メディアは、もちろん批判しています。日本のメディアも「謝罪がなかった」などと批判しています。しかし、皆さんは、是非安倍総理の演説全文を読んでいただきたいと思います。できればアメリカ人の気持ちになって。

まず、これを読むとわかりますが、総理は上記三つの間違いをしませんでした。終始一貫して、「アメリカを褒めること」に徹しています。見てみましょう。

議長、副大統領、上院議員、下院議員の皆様、ゲストと、すべての皆様、1957年6月、日本の首相としてこの演台に立った私の祖父、岸信介は、次のように述べて演説を始めました。

 

「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」。

 

以来58年、このたびは上下両院合同会議に日本国首相として初めてお話する機会を与えられましたことを、光栄に存じます。

これは、「私は民族主義者じゃなくて、あなたたちと同じ価値観の持ち主なのだ」といっているわけです。

私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。家に住まわせてくれたのは、キャサリン・デル・フランシア夫人。寡婦でした。亡くした夫のことを、いつもこう言いました、「ゲイリー・クーパーより男前だったのよ」と。心から信じていたようです。

 

ギャラリーに、私の妻、昭恵がいます。彼女が日ごろ、私のことをどう言っているのかはあえて聞かないことにします。

 

デル・フランシア夫人のイタリア料理は、世界一。彼女の明るさと親切は、たくさんの人をひきつけました。その人たちがなんと多様なこと。「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。

 

のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。

 

上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わりなく意見を戦わせ、正しい見方ならちゅうちょなく採用する。

 

この文化に毒されたのか、やがて政治家になったら、先輩大物議員たちに、アベは生意気だと随分言われました。

この部分。

安倍さんは、「私は実際にアメリカに住んでみて、アメリカを尊敬しているし、大好きなんだ。あまりにアメリカが好きなので、アメリカナイズされた」という意味。

これを聞いたアメリカ人は、「全然軍国主義者じゃないし、俺たちの仲間じゃないか」と思ったことでしょう。

私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。民主政治の基礎を、日本人は、近代化を始めてこのかた、ゲティズバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです。

 

農民大工の息子が大統領になれる──、そういう国があることは、19世紀後半の日本を、民主主義に開眼させました。日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。出会いは150年以上前にさかのぼり、年季を経ています。

ここで総理は、「リンカーン」を尊敬し、「民主主義」を非常に大切にしていることを明らかにしています。

「アメリカとの出会いは民主主義との遭遇」だった。

「浦賀に来航したペリーは、『開国しなければ、攻撃するぞ』と恫喝したのです」とはいわず、「民主主義との遭遇」とした。「目的」から考えればまったく正しいことです。

安倍総理は、戦争で亡くなったアメリカの兵士に謝罪した

つづいて総理は、第2次大戦の話をされます。

先刻私は、第2次大戦メモリアルを訪れました。神殿を思わせる、静謐(せいひつ)な場所でした。耳朶(じだ)を打つのは、噴水の、水の砕ける音ばかり。

 

一角にフリーダム・ウォールというものがあって、壁面には金色の、4000個を超す星が埋め込まれている。その星一つ、ひとつが、斃(たお)れた兵士100人分の命を表すと聞いたとき、私を戦慄が襲いました。

 

金色(こんじき)の星は、自由を守った代償として、誇りのシンボルに違いありません。しかしそこには、さもなければ幸福な人生を送っただろうアメリカの若者の、痛み、悲しみが宿っている。家族への愛も。

 

真珠湾、バターン・コレヒドール、珊瑚海……、メモリアルに刻まれた戦場の名が心をよぎり、私はアメリカの若者の、失われた夢、未来を思いました。

 

歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙とうをささげました。

 

親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。とこしえの、哀悼をささげます。

ここで明確に、第2次大戦で亡くなったアメリカ兵士にお詫びしています。

「中韓に謝罪しなかったこと」を理由に演説を批判する人がいます。しかし、アメリカにいってなぜ「中韓」に謝罪しなければならないのでしょうか? これは、アメリカ大統領に、「中国にいったとき、『広島に原爆を落して申し訳ない』と謝罪しろ!」というほど、おかしなことです。

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