東電元トップらを強制起訴。「東電裁判」を新聞各紙はどう報じたか?

 

個人の刑事責任を問う困難

【毎日】は1面トップと3面の解説記事「クローズアップ」。見出しは以下の通り。

・「原発事故 津波対策怠る」
・東電元会長ら強制起訴
・東電「想定津波15メートル」争点に
・元会長ら無罪主張へ
・有罪立証 高いハードル

uttiiの眼

リード部分には、立証は困難だが「公判を通じて新たな事実が明らかになることへの期待も寄せられている」とあり、「期待ベースの文章になっている。本文では、大地震の想定と津波の試算にも関わらず対策を講じなかった理由ついて、武藤被告と武黒被告の主張は、対策が必要ないと判断したからであり、経済合理性を優先した結果ではないという主張であること、当時の勝俣社長は自分には「報告がなく、緊急に津波対策が必要と認識していなかった」と責任を否定していることが書かれている。

記事の後半は、強制起訴事件に伴う問題について。元検事の高井弁護士は「1,000年に一度とされる震災によって起きた事故の責任を個人に負わせることには無理がある。常識的に考えて予見できたと言えなければ、刑事責任を問うべきではない」として、そもそも不起訴の理由が「嫌疑不十分」ならば強制起訴の対象から外すべきだという。それに対して、やはり元検事の古川弁護士は、3人が事故の発生を予測できたと言え、「裁判を通じた事故原因の解明も求められている」と肯定的。

今回の指定弁護士に関する情報は、《読売》以上に詳しい。石田弁護士は、神山弁護士が関わった東電女性社員殺害事件をともに担当していたことが書かれている。《毎日》がわざわざこの情報を載せるのは、東電女性社員殺害事件では被告の無罪を勝ち取った2人の弁護士が、今度は有罪を求め、「逆の立場でどのような立証をするかも注目されている」と書きたかったがためのようだ。何か、独自の視点、論点、あるいは表現を追求するのは、物書きとして極めて健全な態度だと思う。《毎日》の記事はやはりどこかユニーク

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