反対にイングランドの側では、離脱によって「壊滅的なダメージ」が各産業の「対EU貿易交渉」を通じて出てくると思います。その中で、この日立の工場に関しては「外国勢だから」という理由で「そんなに積極的にならない」可能性、つまり「英国企業が強い産業で何とか好条件を引き出すための捨て石」にされる危険性もあるように思います。
これに加えて、スコットランドは「EU残留」を強く希望しており、場合によっては「連合王国からの独立」という事態も起こってくる可能性があります。そうなると、スコットランドとイングランドの国境に「移民が流入しないような検問所」などが作られるなど、両国の往来に障害が出てくる、そして相互の人に流れが弱くなる可能性もあります。そうなれば、ヴァージン系列の「イングランド=スコットランド幹線」にもマイナスです。
いずれにしても、日立はイングランド北部での「雇用創出」をという英国政府の要望に沿って進出したわけですが、事態は一転して大変に厳しいことになってしまいました。他の産業でも同じようなことが起きて行くと思います。また日系の資本だけでなく、様々な国の資本、そして英国の地場の資本もEUという市場を失うことで大混乱になっていくと思いますが、この日立の事例は皮肉なことに、その典型的なケースになりそうです。
image by: 首相官邸
『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋
著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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