短距離の女王・福島千里の「女の子走り」を監督が直さなかったワケ

 

実は福島も最初の頃は、右の腕振りのことで周囲から結構言われたんですよ。もう本当にあちこちで、福島の腕振りを直させたほうがいいと言われたので、そのたびに僕は

あれがいいの。あれでうまくリズムをとって走っているの」

とだけ言ってきました。ところがここ最近、ちゃんと理に適った腕振りになってきたんですよ、本人に何も言わなくても

力強く腕を振って前に進もうと思ったら、自ずと直っていくんです。だから指導者というのは我慢が必要ですね。いつも近くで見ているわけだから、つい言いたくなっちゃうんですよ。でもそれを我慢して、いかにじっと見守ってあげられるかです。

でも、私自身、いまはこんな偉そうなことを言っていますけど、かつてはそうではなかったんですよ(笑)。

私が福島の指導にあたるようになったのは60歳を過ぎてからですが、もし仮に40歳くらいの頃に出会っていたら、彼女は潰れていたと思います。当時は選手を捕まえては、ばんばん口を出していましたから。

でもだんだん口を出さないようになって、黙って見るようになった。いまはもう選手のことをじっと見ていれば、だいたいのことは分かります。だから本当に必要なことしか言わない。シンプル・イズ・ザ・ベストですよ。

『致知』2015年9月号掲載

 

 

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