モーターによる加速はドライバーがコントロール
919ハイブリッドの全回生量のうち制動エネルギーが60%を占め、残り40%は排気エネルギーから得られている。回生された電気エネルギーはリチウムイオンバッテリーに一時的に蓄えられ、要求に応じてフロントの駆動モーターへ供給される。 つまりこの段階では4WDとなる。
「要求に応じて」とは、ドライバーが加速したい時にボタンを押すだけで電気エネルギーを呼び出せることを意味する。最新のレギュレーション変更に従って、エンジンの最高出力は500ps(368kW)を下回っているのに対し、電気モーターの出力は400psをオーバーする。
これら2種類の回生されたエネルギーの使用と、エンジンの駆動の配合には高度な制御が必要となる。制動時には毎回エネルギーを獲得、すなわち回生される。ニュルブルクリンクの全長5.148kmのグランプリサーキットでは、このブレーキエネルギー回生が17のコーナーの手前で、つまり毎周17回のブレーキエネルギー回生が発生する。
回生されるエネルギーの量は、ドライバーがコーナーに進入した時の速度とコーナーがどれだけタイトか? 言い換えるとブレーキの強さによって変化する。ブレーキングによる回生は全てのコーナーのクリッピングポイントまで続き、ドライバーはそこから再び加速に移行する。
この加速時の目標は、できるだけ多くの電気エネルギーを利用することになる。そのためドライバーは、スロットルペダルを踏み込んで燃料エネルギーを使うと同時に、バッテリーから電気エネルギーの「ブースト」も行なうのだ。
エンジンが後輪を駆動するのに対し、電気モーターはフロントアクスルを駆動する。つまり919ハイブリッドは4WDシステムを用いてトラクションを失うことなくコーナーから全力で加速する。さらにストレート走行では、排気エネルギーを利用し発電用のタービンがフル稼働するので、再びエネルギーを回生することができる。
このタービン兼ジェネレーターはエンジン回転数が安定して高い場合、排気マニホールド内の圧力が素早く上昇し、タービンを高速回転させ、発電する。しかし、こうした2種類の電気エネルギー源の使用はレギュレーショ ンによって制限されており、ドライバーは1周あたり1.8Lの燃料と1.3kWh(4.68メガジュール)の電力しか使用することが許されていない。