NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は前回の「真田丸『第32話』裏解説。城は本当に「権力の象徴」なのだろうか?」に引き続き、「城の存在意義」についてお伝えします。著者の西脇さんは「城は領地を支配するための御殿」だと思っている人が多いと前置きした上で、その認識は間違っていると反論しています。
今回のワンポイント解説(8月21日)
君は安土城や大坂城を、竜宮城か何かだと勘違いしているのではないかね? 城のことを、領地を支配するための政庁だと思いこんでいる人が多いのだけれど、はっきり言いますね。その認識は、論理的・原理的に間違っている、と思う。
権力者の住む御殿があって、それが領地を支配するための政庁をも兼ね、その御殿(私邸と公邸)を防備するために、堀や土塁や石垣が築かれて城が成立してゆくのだったら、城の本丸は御殿がすっぽり入るだけの広さを持っていなくてはならない。
というか、必要な御殿の広さを基準にして、縄張りがなされるはずだ。少なくとも私邸としての奥向き御殿はちゃんと本丸に入っていて、その回りに公邸(表御殿)や奉行所などが入る二ノ丸・三ノ丸が広がってゆく構造になるはずだ。
でも、実際の城はそうなっていない。たとえば、彦根城や高知城。20万石クラスの領地を治めるための御殿を入れるには、本丸が狭すぎるでしょ。姫路城の備前丸だって、公邸まで含めた御殿を置くには狭すぎる。これは、近世の城が「御殿の回りを囲んでゆく」というのとは、まったく別の原理で成立したから、と考えた方がいいんじゃないだろうか。
つまり、戦国の城の発展型として成立した近世の城は、もともとが戦うための城=軍事要塞。そして、いつ戦争になるがわからない状況なので、狭くてもガマンして軍事要塞の中に住むことにした。なので、結果としてそこが政治の場にもなる。
こうした前提に立たないと、秀吉が死んだあとに起きる動乱の中で、それぞれの城が果たした役割とか位置づけが、見えてこないと思う。でも、城は領地を支配するための御殿・政庁で、それを立派に見せるために天守を建てたり、石垣を積んだりしている、というイメージから抜け出せない人、多いんだよなあ。日本中が戦争に備えて身がまえている時に、領地のまん中に見ばえがする美しいお城を建てて、お殿様とお姫様が暮らしていました、なんていうのは、おとぎ話じゃなかろうか。
そんな事を考えながら、秀吉の死後、豊臣政権が崩壊してゆくドラマを見てみると、ちょっと深い楽しみ方ができるかもしれない。(西股総生)
《今週のワンポイントイラスト》
多数派工作、先にじれた方が負け。待つのが得意な家康が有利!?(みかめ)
文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)
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コース番号03335-086
その3
11月 27日(日)に下記イベントにてナワバリンググッズの販売予定。
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