日本のお家芸「技術力」が、実は景気回復の足を引っ張っている

 

日本人が得意なレベルは実は階層としてはかなり下に位置しています。一例をあげると、例えば、幕末の新撰組。仮にあなたがスゴい剣術を持った幕末の志士であっても、相手に3人がかりで斬りつけてこられたら勝てない。新撰組がやったのはまさにこれで、多摩出身の田舎侍の1人の腕(技術)よりも、3人がかりのチーム(戦術)で強い相手に勝つことを狙った。つまり彼ら新選組は、相手より高い階層で勝負したから強かったのです。

階層の仕組みがわかると、なぜ優秀だと考えられている日本の企業や個人が、バブル後にずっと「負けパターン」にハマっているのか? これが実によく分かります。その一例が「ものづくり」です。バブル後の1990年代から国策に近い形で追求されていますが、これは「技術」レベルのスローガンで、階層では一番下です。つまり、いくらすごい「技術」でもうまく使う人がいないとそれ以上のレベルを使ってくる相手には勝てないのです。

確かに日本は「技術」でまだしぶとく勝てている。同じく個人でも「スキル」という「技術」レベルの才能を磨いている優秀な人はたくさんいます。ところが日本は全然豊かになっていない。少なくとも、われわれの生活にはバブル期以降、「豊かになった」という実感がない。

日本は技術で勝ちに行こうとするから負ける。これは「戦術レベルの思考」です。「戦闘」で勝っても、その上の「戦略」などのレベルで負けていると、いとも簡単に優位を覆されてしまうのです。

出版や書籍の世界での例をみれば、皆さんもよくご存知の通りの状況があります。いくら品質の高い本を作っても、流通を握っている某巨大販売サイトに値段を一方的に決定されれば、それには逆らえない。いくらいい物を作っても販売・流通ルートを握られていたら、いつまでも勝負には勝てないのです。

個人であっても話は同じです。いくら資格や語学など「スキル」を磨いても、働いている会社の上司に評価されなかったら、せっかくのスキルも宝の持ち腐れ。上司を超えることもできない。ではわれわれに足りないのは一体何なのか?

次にキーワードとなるのが「コントロール」。「技術」や「戦術」ではなく、「戦略」レベルで目指すべき「コントロール」なのです。

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