日本のお家芸「技術力」が、実は景気回復の足を引っ張っている

 

戦略学の世界でいうところの「コントロール」とは、「常に優位に立って管理すること」を意味します。そして、戦略で狙うべきことは勝利ではなくコントロール」なのです。

確かに国家間の戦争で狙われるのは、軍事的に相手に勝利すること。しかし、せっかく戦争に勝っても、敵との和平交渉などで不利な条件を突きつけられれば、「戦争に勝って平和で負ける」ことになる。日本は第一次世界大戦中に対華21カ条要求を提示しながら、欧米列強からの圧力で要求を引っ込めざるを得なりました。これなどはその典型です。個人では、その場で実際にやり合ってケンカには勝っても後の裁判で負け、高額の賠償金や医療費を払わされるはめになった…などのケースも同じことです。

戦略で狙うべきことは「相手をコントロールすること」。もっと分かりやすくいえば、戦っている最中も、後も、自分にとって不都合にならないように「相手や状況をうまく管理すること」。さらに詳しくいえば、バトルでの勝利(これは戦術の狙い)より、戦いが行われる仕組みやルールそのものを作り、相手より長期的に優位な状態を保つことを狙う。

自分たちに有利な環境づくり」。これが日本人が最も不得意とすることで、日本は誰かにルールを決めてもらい、与えられた枠組みなどの「環境」の中で頑張るのは得意です。しかし、「環境」そのものを自分に都合よく変えるという発想がなく、致命傷となっています。つまり、目の前のバトル(戦術)に勝とうとするばかりに、それよりも高いレベルのルールづくり(戦略)に目が向かない。日本は勝負自体で勝とうとすることよりもむしろ、「自分の都合のよい場をつくって相手(そして自分自身も)コントロールすることを心がけるべきです。

一般的に日本人が得意なのは、ゲームで例えてみると、ゲームそのもののスキル。ですが、外国の戦略家たちはゲームの腕前より、ゲームのルールを作り最終的に自分たちに有利な稼げる環境や状況を作ろうとします

彼らはその部分で勝負してくるのです。これではいかに日本人が地道に頑張っても、お釈迦様の手のひらの孫悟空のようなもので、いくら頑張って働いても、どうもリッチな気分になれない…、というのも、ある意味で、当然とも言えます。この視点を理解できたときに、日本人は本当の「戦略思考」をはじめて手に入れたといえます。

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