お土地柄は人柄から。郷土愛の遺伝子が歴史上の偉人を生み出している

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「県民性」という言葉もすっかり定着した観がありますが、確かに各々の土地に住む人にはそれぞれ特徴があるものですよね。無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、歴史研究家の白駒妃登美さんの著作を紹介しつつ、日本各地の土地柄や郷土愛について、メルマガ著者の伊勢雅臣さんが深く掘り下げています。

土地の遺伝子、郷土の偉人

「博多の歴女」こと、歴史研究家の白駒妃登美(しらこま・ひとみ)さんの最新刊『歴史が教えてくれる 日本人の生き方』を興味深く読んだ。特に、日本各地の土地柄が似たような歴史上の人物を生んでいるという指摘が面白かった。たとえば、こんな一節がある。

強烈にその土地を愛した人がいると、その人の生き方や思いというのが、土地に染み込んで、それが土地の遺伝子のようになるのではないかと想うことがあります。その結果、似たようなタイプの人たちがその土地から出やすくなるのではないでしょうか。
(『歴史が教えてくれる 日本人の生き方』 p32)

この視点から、この本では、いろいろな土地を取り上げて、そこで生まれた偉人たちを紹介しているが、その中から興味深い例をいくつか見てみたい。

博多の遺伝子「奉公」

まずは白駒さんの御自身の出身地、博多から見てみよう。

博多は、おそらく日本で一番古い国際都市であり、商業都市だったのではないかと想います。…私は、博多商人の気質がとても好きです。今でも名残があると思いますが、博多商人には、自分だけが一人勝ちしようという意識が薄いのです。町全体、業界全体のことを考えている人が非常に多いのです。
(同 p56)

私にも博多出身の知人友人で実業家や教育関係者などがいるが、本業とは別に、あるいは本業を通じて、ごく自然に地域や公共のために尽くしている人が多い

たとえば、「誇りと志ある日本人」の輩出を目的として、小中一貫校を作ろうという産官学の有志による「小中一貫校志明館設立プロジェクト」が始まっている。その発起人会には、JR九州、西日本鉄道、福岡銀行、西日本新聞社など、地元財界の有力企業の役員から、中小企業経営者、個人の篤志家まで100名近くもずらりと並んでいて壮観である。

弊誌なりに考えれば、博多の遺伝子は公のために働くこと、すなわち「奉公」だと言えるのではないか。この遺伝子を決定づけたのは、鎌倉時代の謝国明(しゃ・こくめい)という商人だと、白駒さんは考えている。博多に住んでいた中国人商人で、日宋貿易で巨万の富を得た人物だ。

謝国明は利益を貪るように生きてきたのだが、聖一国師しょういち・こくしという禅僧に会って愕然とする。世のため人のために自分の人生を捧げている聖一国師を見て、「こういう生き方があったのか」と悟ったのである。そして、自分も商人として世のため人のためにできることをやっていきたい、という志を抱く。

謝国明は聖一国師のスポンサーとなって、師の活動を支えた。博多の承天寺は謝国明が師のために建てた名刹(めいさつ)である。

ある年、博多の町に疫病が流行して、聖一国師はそれを防ぐために町の衛生環境を整えなければならない、と考え、水を撒いて町を清めて歩いた。これが毎年7月に行われる博多祇園山笠の起源と言われている。

こういう言われを聞いた子供たちの心には、人のために尽すのが良い事だという考え方が自然に擦り込まれるだろう。それが遺伝子となって、奉公を志す人物が育っていく。

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