医師が宣告する「余命3日」とはどのような状態なのか?

2016.11.23
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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「余命の基準」とはどうやって判断されるのでしょうか?

余命宣告は、病気の治癒のための治療を行うことが難しくなった時になされます。

文字通り、「その人があとどれくらい生きることができるのか」を意味しますが、基本的に、宣告通りに亡くなることはあまりありません。

それではいったいどのように判断されているのか、今回は「がん」と想定して詳しく解説していきましょう。

余命はどのようにして決まるのか

余命は「生存期間」の中央値を取っています。

生存期間とは、その病気集団において「50%の患者が亡くなるまで」の期間のことです。

つまり、同じ病気の100人の患者がいた場合は、50人目が亡くなった時点がその病気の生存期間中央値(=患者の余命)となるのです。

半分の患者が亡くなるまでの期間であり、全患者の平均値ではありません。当然ながら、その病気の生存期間中央値(余命)が1年だとしても、3年、5年と生きる人が一定数いるのです。

末期のがんの患者でも、すべてが5年以内に亡くなるわけではありません。

余命3日とはどういう状態か

では、「余命3日」とはどういう状態なのでしょうか? 

もはや食べ物を受け付けないとか、呼吸困難になっている、血液データから内臓の機能が極端に低下している、意識がもうろうとしている──などの末期的な状態に陥れば、余命が数日であることは、医師の経験から予想できます。

しかし、余命はあくまでもデータや経験に基づく予測値であって、実際にその人がいつ亡くなるのかは医師でもわかりません。

生存率は、選択される治療法や病気の進行具合、個人差によって、その患者の実際の余命は大きく違ってくるのです。

ならば、なぜそんなあやふやな情報をわざわざ宣告するのかと言えば、あとどれくらい生きられるかのおおよその目安を、本人や周囲の人に知ってもらうという意味合いが大きいと考えられます。

これから何十年も生きるのではなく、数か月後には亡くなってしまう可能性が高いことを意識して過ごすことは、残された時間をより有意義に使うという意味で必要なことだと言えるでしょう。

本人への余命宣告

1990年頃までは、がんは本人には告知しないことが多かったのですが、最近は本人に告げるのが一般化しつつあります。

本人が受け入れられないような場合は、家族の意向で本人には隠しておくこともありますが、本人にはっきりと病名と余命を告げるケースが増えています。

現場では、実際の予測よりも余命を短めに宣告する医師が多いようです。

これは、宣告された期間よりも長生きすると本人や周囲が前向きになれるからです。

余命の宣告の問題点

余命を告げることには問題点もあります。

治癒するつもりで頑張っていた人が、余命を宣告されて生きる気力を失ってしまう可能性もあるからです。

余命宣告したことで、それがどの程度影響するのかがわからないことも多いのです。

一方で、余命を宣告されずに病気と闘い続けて、次第に闘うことが難しくなり、死を悟った時にはもう動くこともできず、思い残したことがたくさんある、というケースも考えられます。

残された時間を使って、ギリギリまで病気と闘うか、それとも人生の「まとめ」に入るかは人それぞれですが、それを考えるうえでは、余命宣告は重要だと言えるでしょう。

 

執筆:南部 洋子(看護師)
監修:岡本 良平(医師、東京医科歯科大学名誉教授)

image by: Shutterstock

 

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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