元モヒカン頭で仕事嫌いの青年が、たった20円で世界を笑顔にする

 

貧しい子どもたちに給食を~日本発の感動ビジネス

アフリカのケニア。高層ビルが立ち並ぶ首都ナイロビ。経済成長著しい。しかし地方に目を向ければ、貧しい地域がほとんどだ。

アフリカ最大の湖、ビクトリア湖に浮かぶルシンガ島の小学校をTABLE FOR TWOは支援している。島の人口はおよそ3万6000人。多くは漁業や農業といった一次産業で生計を立てている。

その生活は厳しい。ある4人家族の台所を見せてもらうと、夕食の食べ物はごくわずか。一日一食食べるのが精一杯だと言う。両親は病気で亡くなり、おばあちゃんが3人の孫の面倒を1人で見ている。ケニアでは一日200円以下で暮らす人達の割合、いわゆる貧困率が人口の43パーセントに達している。

そんなルシンガ島にはるばるやって来たNPO法人TABLE FOR TWO代表、小暮真久。目的地の小学校に到着すると、その視線の先には大勢の小学生が。小暮を歓迎する歌の大合唱が始まった。紙には「給食をありがとう」の文字が。

午前9時半。子どもたちは列を作り始めた。その先で配られていたのは朝ご飯の給食。日本で集められた寄付金で作ったものだ。中身は地元の穀物や芋の入ったポリッジというお粥のような食べ物。栄養価が高いという。およそ半数の子どもが、昨夜も今朝も何も食べずに学校へ来ている。

「給食がなかった時は、子どもたちは家でご飯を食べていないので、学校でお腹を空かせて寝ていたんです。給食を食べられるようになってからみんな明るく元気になりました」(ベロニカ・キマンジ校長)   

4年前に給食が始まると、それまで学校に来ていなかった子どももやって来るようになった。4割だった出席率は2倍の8割になり、さらに中学へ進学する子どもも増加。給食が教育の普及にもつながっているのだ。

今回、小暮がこの学校にやって来た目的は、日本の寄付金が正しく使われているか、確認するためだ。

料理室では朝食に続き、ちょうど昼食を作っていた。食べ物をチェックする小暮。壁には1週間分の献立表が貼ってあった。月曜のおかずはイワシだ。現地では安くはないお米もメニューに。生徒の親が水汲みや調理などを手伝い、人件費を浮かせるなどしてやりくりしている。この学校では予想以上に日本の寄付金が大事に使われていた。

「日本だったらたった20円ですが、ここでは価値が何十倍にも大きくなります。大袈裟に言えば、子どもたちの未来をつくっている食事だと思います」(小暮)

TABLE FOR TWOは、これまでアフリカ6カ国とフィリピンの子どもたちに給食を届けてきた。しかし支援を求める声は後を絶たない。

今回、小暮がアフリカへ来たもう一つの目的は、次に支援する学校を決めるための聞き取り調査。ケニア国内で給食を実施できている学校は3割に満たない。だからこそ支援先を増やし続けている。

小暮が子どもたちにいつも聞くことがある。勉強を続けて卒業したら、将来、どんな職業に就きたいか。「パイロット」「ジャーナリスト」と答える生徒たち。たとえお腹を空かせていても、子どもたちは希望あふれる夢を持っていた。

「こうやって定期的に現地に来ると、心の底から『絶対に食事を出してあげなきゃ』と思う。まだまだこれからという気持ちです」(小暮)bnr_720-140_161104

企業も学生も支援!~広がる草の根活動

この日、東京・千代田区にTABLE FOR TWOの活動に社食で寄付の協力をしている企業が集まっていた。各企業は少しでも寄付を集めるべく工夫したヘルシーメニューを出している。そのメニューを選挙で競おうというものだ。

気に入った企業の社食メニューにシールを貼って投票する。もっとも美味しそうと票を集めた1位のメニューは、いすず自動車の、そのままでも、お茶漬けでも美味しい「発芽玄米の味噌焼きおにぎりセット」だった。

「僕らが動いてないところでも、ある意味で勝手に動いてくれる。草の根で広がり始めていることがうれしいですね」(小暮)

新規事業も続々と生まれている。その一つが全国チェーンのスーパー、西友で始まっている「カロリーオフセットプログラム」。

並べられたカロリーオフの弁当には「対象商品」という文字。これがTABLE FOR TWOの寄付となる商品。ただし寄付金は給食ではなく、開発途上国の菜園作りに充てられる。ただ食料を提供するのではなく、自分たちの力で作る方法を支援。飢餓を根本から解消しようとする新たな事業だ。

賛同者は企業以外にも広がっている。

上智大学の学生食堂で列ができていたのは、火曜日限定のヘルシーメニュー。この日は「海鮮八宝菜定食」で、代金には20円の寄付が含まれている。ただし、TABLE FOR TWOが大学に導入を頼んだわけではないと言う。学生たちが自主的に支援サークルを作り、学校と交渉。学園祭などでも寄付を呼びかけてきた。こうした動きは全国120の大学に広がっている。

さらに支援が目的のイベントも。横浜市で行われた学生が運営するフットサル大会「フットサル・フォー・ツー」。今回は17チームが参加。参加費は1チーム1万3000円。そこからの寄付額は、試合で出た1ゴールで10食の給食として支援国の子どもたちに届く形になるという。この大会では4000食分の約8万円が寄付に回された。若き賛同者たちはTABLE FOR TWOの今後の活動にとっても強い味方となりそうだ。

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