ヒアリ、東京にも襲来。「刺されて年間100人死亡説」は本当か?

撮影:松本吏樹郎(大阪市立自然史博物館)
 

まとめ

今回の調査からは、「ヒアリに刺されて年間100人死亡説を裏付ける文献は見つからなかった。また、1年の間にヒアリに刺されて死亡する実際の人数についても、知ることはできなかった。

しかし、だからといって、「ヒアリに刺されて年間100人死亡説をデマとするのも早計だろう。もしかすると、アメリカ国内の専門家の中には、公表されたない何らかの情報を根拠とし、この「100人説」を支持する人が一定数いるのかもしれない。

また、「100人説」を根拠とする公開データが見つからないからといって、「安心してよいと言うこともできないだろう。いずれにせよ、仮に「100人説」が真実だとして、ヒアリに刺されて死ぬ確率は0.001パーセント以下であり、そこまで神経質になりすぎる必要はないと思われる。

アメリカでは、ヒアリ被害の対策や啓蒙も盛んになされており、以前よりも人々がヒアリに対して警戒するようになっている面もあるだろう。ただ、その一方で、アメリカではヒアリの生息域が拡大するだけでなく、その生息密度も増加している。アメリカの人口も増えており、ヒアリに遭遇する人が増えていない、とも言い切れない。

国際社会性昆虫学会日本地区会のウェブサイトによると、現在、この死亡者数について調査中とのことなので、そのうち、より正確な数字が出てくるかもしれない。

image by: 松本吏樹郎(大阪市立自然史博物館)(CC BY 4.0)

堀川大樹『クマムシ博士のむしマガ』

『クマムシ博士のむしマガ』

著者/堀川大樹(クマムシ研究者) メルマガはこちら

北海道大学大学院で博士号を取得後、2008年から2010年までNASAエームズ研究所にてクマムシの宇宙生物学研究に従事。真空でも死なないクマムシの生態を解き明かしたことで、一躍有名研究者に。2011年からはパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所に所属。著書に『クマムシ博士の「最強生物学」講座』(新潮社)。人気ブログ「むしブロ」では主にライフサイエンスの話題を提供中。

print
いま読まれてます

  • ヒアリ、東京にも襲来。「刺されて年間100人死亡説」は本当か?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け