さらに、冷戦当時、ソ連や中国、そしてアメリカ以外にも核の保有に強くこだわった国がありました。フランスです。
フランスは、第二次世界大戦後、インドシナ戦争でベトナムを失い、北アフリカではアルジェリアが独立するなど、その影響力に強い陰りがあったのです。
また、第二次世界大戦が終結したあとのフランスは、戦禍からの復興のために、アメリカに経済的に依存していたのです。過去の威信と政治的、経済的な自立を取り戻すためにも、フランスは核の保有にこだわったのです。
しかし、現実の核戦争の危機という意味でいうならば、宗教的な対立に加え、領土問題も抱えていたインドとパキスタンの双方が核を保有したことがあげられます。
インドは74年、パキスタンがインドに対抗して核の保有を宣言したのは98年のことでした。
こうした核の脅威を緩和するために、1970年に国連加盟国62カ国によって調印されたのが核拡散防止条約 Treaty on the Non Proliferation of Nuclear Weapons です。北朝鮮は、この条約から脱退したために、制裁 sanctions の対象となっているのです。
しかし、この条約自体完璧なものではありませんでした。従来の核保有国の核軍縮に対して効果を発揮できないばかりか、インドやパキスタンのように条約の批准 ratification を拒否したまま核を保有している国家が存在している現実を克服できないからです。
また、今回の報道のように、核技術の流出には有効的な手段がないままなのです。北朝鮮の場合も同様です。北朝鮮は条約から脱退した上に、核の搭載を示唆するミサイルの発射を繰り返しています。
いずれにせよ、核という大量破壊兵器 weapon of mass destruction に頼った脅迫外交の愚かさは、すでに冷戦の初期から議論されていました。
そうした意味からも北朝鮮への厳しい対応が求められるのは当然のことでしょう。
しかし、アメリカと北朝鮮との関係をみると、売りことばに買いことばという子供じみた舌戦の応酬のようにみえるのも事実です。振り上げた拳をうまく下ろさせることができないとき、北朝鮮が拳の下ろしどころを誤ることもありえるでしょう。
核の脅威が、中国や旧ソ連、さらにアメリカという超大国から顕在化することは、そもそもあり得ないことだったのです。
むしろ、北朝鮮の事例のように、特殊な体制を持つ国家や団体が、自暴自棄になったときが問題なのです。また、北朝鮮がブラックマーケットを通して核技術を入手したとすれば、北朝鮮から核技術の再流出がないという保証はどこにもないのです。
加えて、そうした国家や団体への制裁が武力行使へと変わったときは、超大国そのものの核の使用へと繋がり得ることも知っておくべきなのです。
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