残業ゼロ。日本一労働時間が短い会社が上げ続ける驚異の利益率

 

「女の子に代わってくれ」

実際に未来工業の社員たちが、日頃、どのように頑張っているのか、もう少し現場を見てみよう。お客さんから営業部への電話は、担当の女性社員が12人いる部屋に入るようになっていて、彼女らが用件を聞いて、対応している。

そしてそのために、女性社員たちは一生懸命、努力している。たとえば、次々とつくられる新製品をその部屋に運び込んでは、実際に手に触れながら、どんな製品なのかをいち早く説明できるように勉強している。

 

また、自社製品のパンフレットだけではなく、他社製品のパンフレットも揃えてあるし、他社の製品ポスターが貼ってあったこともあった。メーカーによって製品名が違うことがあるが、他社の商品名を言われても、すぐに対応できるようにするためだ。

 

その成果もあって、いまでは、女性社員が出られずに男性社員が出ようものなら、お客さんから「女の子に代わってくれ」と言われるほどだ。それだけ信頼されているし、お客さんを待たせない。
(同上)

多くの企業では男性営業マンが外回りしている間に、お客から電話がかかってくると、女性社員は伝言をメモするだけで、あとは男性社員が帰社してから対応する、という職場が多い。これでは女性社員に、いくら低賃金、長時間労働をさせても、事業成果には繋がらない

これに比べれば、未来工業の女性社員のような仕事をしてくれれば、2倍の給料を払い、労働時間を大幅短縮してもお釣りがくるだろう。

そして、女性社員たちが新製品を手にとって勉強したり、競合先の商品名まで覚えようとするのは、彼女たち自身で「こんなに給料と休みを貰ったら、それだけ頑張らなければ」という気持ちがあればこそである。

「ほかにあるものはつくらん。ほかにないものをつくる」

製品開発部門の頑張りもすごい。現在、1万6,000点ほどの商品があるが、「ほかにあるものはつくらん。ほかにないものをつくる」を鉄則として、全商品なんらかの差別化がされている。

とは言っても、電気設備資材は寸法や材料まで規格が法律で細かく定められているものが多く、技術的にも成熟した分野なので、革新的な商品の出る余地は少ない。

その中での差別化の好例に、創業当初に出したスイッチボックスがある。スイッチを木ねじで柱などに固定する器具だが、当時は木ねじを通すための穴が、底の部分に対角線上に2つ空いているのが常識だった。

だが、未来工業では同じものは作らないと決めていたから、なんとか工夫できるネタはないかと調べてみると、規格で縦横寸法は決まっていても、穴の場所や数については規格がない事が分かった。

そこで箱の四隅に穴を開けた商品を考え出し、スライドボックスと名付けて売り出した。穴が対角線上に2つしか空いていないと、柱が細い場合、一カ所でしか止められない。しかし、4つ空いていれば、縦横斜めのいずれか2カ所で、しっかり固定できる。これが電気工事業者に受けて、ヒット商品になった。

こんな小さな工夫を積み重ねてやっているうちに、スライドボックスのシェアは70~60%に伸びていった。

このように差別化された商品が1万6,000点も生まれたのも、開発部門、製造部門、そして営業部門の担当者が、それぞれやる気を出して、自分の仕事に取り組んでいるからだろう。12%もの利益率はその当然の結果なのである。

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