今までにない焼肉店が続々登場~目からウロコの客をつかむ秘策
最近、続々と登場しているのが今までにない焼肉店。客が大行列をつくる「神保町食肉センター」上野店もそのひとつ。1時間並んででも食べたいのが、店の自慢のホルモンだ。「苦手だった」という女性客も、次々にレバーを食べ、「初めておいしいと思った」と言う。
美味しさの秘密はその鮮度。この店では、その日の朝採りのぷりぷりのレバーを食べることができるのだ。ウリはそれだけではない。この店はランチタイム限定で、45分間、焼肉が食べ放題なのだ。ご飯、サラダ、スープはお替り自由で価格はなんと950円だ。
一方、中目黒の「焼肉いぐち」も今までにない焼肉店。目立たないドアの奥にある店内は、白木のカウンターが囲み、まるでお寿司屋のよう。この店では熟練の技を持つ店主が、肉を一枚ずつ丁寧に焼いてくれる。自分で焼かない焼肉店なのだ。それぞれの肉を最高の焼き加減で味わってもらうための工夫だ。値段は、絶妙の焼き加減の肉寿司もついたおまかせコースが4980円(税別)。肉を焼かなくていいので、会話に集中できるのも人気の理由だ。
いかに焼肉をおいしく味わってもらうか。様々な店がアイデアを競っているのだ。
そんな中、新宿の焼肉店「ブラックホール」の前にあみやき亭の佐藤の姿が。ここは後継者がいないという以前のオーナーから、佐藤が経営を引き受けた。「アクトという会社が4年前にあみやき亭グループに入ったんです」と言う。以前に比べ、売り上げも伸び、店内は賑わっている。
客をつかむのは、おいしそうなこだわりの国産牛の数々だ。佐藤は、扱う肉の精査から、店内のあらゆる備品のコスト管理まで徹底して行ない、儲かる店に一変させたという。アクトグループの清水佑樹氏はその手腕を、「網ひとつの値段にこだわったり、肉のちょっとした品質にこだわったり、あみやき亭が持っているコスト管理能力はすごいです。休みもあって給料も上がり、労働時間も決まっていて、本当に感謝しています」と語る。
同じオーナーから引き受けた「南九州産黒毛和牛 焼肉ホルモン島津」のウリは、分厚く切った南九州産の黒毛和牛。その美味しさで、赤字経営から一気に黒字店に転換したという。
佐藤は、培ったノウハウを武器に次々に店舗を再生。おいしい国産牛を味わってもらう場を増やし続けている。
「我々がやるべきことは、やはり国産牛のおいしさをわかっていただくこと。そのことが畜産農家にも役立つことにつながると思うんです」(佐藤)
~村上龍の編集後記~
食べるとき、肉はすでに切り分けられている。だから、牛と鶏はまったく大きさが違うと、意識することが少ない。
牛は、体も大きく、当然、骨や内臓も大きい。焼き肉屋で食べるサイズにするまで大変な労力と、高度な技術が必要だ。加えて、国産牛は仕入のプロセスが複雑らしい。
佐藤さんは、牛肉の、真のプロフェッショナルだ。牛肉と深く接することで、営業、宣伝、経営を学び、経済合理性も身につけた。そして、とても大切なことを、示唆する。
わたしたちは、カルビやロースという部位とともに、「生命」を食しているのだ。
<出演者略歴>
佐藤啓介(さとう・けいすけ)1950年、新潟県生まれ。1971年、兄が経営する三河屋入社。1995年、独立、あみやき亭設立。2009年、スエヒロを買収。
image by: WikimediaCommons(円周率3パーセント)
source:テレビ東京「カンブリア宮殿」