ユニクロ社長の座を蹴った男が仕掛ける「ファミマ」大改革の全貌

 

ユニクロからファミマへ~熱血社長の大改革

従来のファミマのイメージを覆す澤田は異色の経歴を持つ。1981年、上智大学理工学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。イトーヨーカ堂担当となり、鈴木敏文氏(当時社長)とともに、アメリカのセブンイレブン再建を手掛けた。そのとき流通業に魅せられた澤田は、1997年、39歳で伊藤忠商事を退社する。

「セブン‐イレブンみたいなことを将来的にやってみたい。で、僕は日本の流通業のトップになりたいとはっきり見えた。僕はそこに人生をかけよう、と」(澤田)

流通業を学ぼうと飛び込んだのがファーストリテイリング。ほどなく副社長に抜擢されると、フリースブームの立役者となった。柳井正氏からは次の社長に請われていた。ところが当時44歳の澤田はその要請を受けずに独立。その後、2005年に企業の経営支援をする会社「リヴァンプ」を立ち上げ、「ロッテリアの再建や、「クリスピー・クリーム・ドーナツを日本に上陸させて話題を呼んだ。

こうした手腕が買われ、去年、経営統合後の新生ファミリーマートを託された。ファミマの親会社で、澤田の古巣でもある伊藤忠商事からの熱烈なオファーだった。

「まだまだセブンとは格差があるが、キャッチアップしていきたい。澤田社長が応えられる」(上田準二前ファミリーマート会長)

「セブン‐イレブンに追いつき、追い越せ」というミッションを背負った澤田には、就任以来、心がけていることがある。とにかく現場の声を聞こうと、全国1万8000の加盟店を回ることに決めたのだ。この一年で、およそ300店に足を運んだ。

地方の加盟店にとって、本部の社長は遠い存在。だが澤田は、店まで出向いて、一人一人の手を握る。澤田が特に気にかけているのは、サークルK・サンクスから転換した店だ。  

宮城県の宮城松島あたご店も6月に転換したばかり。「転換して頂いてありがとうございます。いかがですか、転換後?」と訊ねる澤田に、オーナーからは「ビックリの売上です。ファミチキも売れています。“先輩”のおかげだと思います」という答えが返ってきた。

だが、続けて「おいしいお弁当をお願いします」という言葉も。「まずいですか?」と聞く澤田に、「もっとおいしいものを作れる気がします」。

改革は、まだ始まったばかりだ。

「売り上げがすごく伸びたとおっしゃって頂けてすごくうれしい。ただ、『もっとおいしいお弁当を』とご指摘頂いたので、しっかりやらないといけないですね」(澤田)

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社運をかけた中華まん、開発の舞台裏

セブン追撃のカギはなんといっても商品力。埼玉県上里町の「ジョイアス・フーズ」では、3枚の生地が1枚になって麺が作られていた。

三層麺です。外は弾力があって中はしっかりした層の麺になるので、より食感がよいものをお客様に提供できる」(ファミリーマート調理麺担当・山田忍)

ファミマの自信作、三層麺を使ったラーメン。チルドという冷蔵タイプにしたことで味が良くなり、一日10万食を売り上げる大ヒット商品となった。そこに今年はこれでもかとチャーシューを載せた「チャーシュー麺」(期間限定・598円)を投入した。

ファミマは今、食品に力を入れている。各店の1日の平均売上高、いわゆる日販は52万2000円と業界3位。1位セブン(65万7000円)との差は歴然としている。そこでこの秋冬シーズン、勝負をかけた商品を投入することになった。

記者会見の席で「中華まんについては大刷新といって問題ない。正直言ってコンビニレベルではなく中華街レベル」(ファストフーズ部部長・島田奈奈)と、自信満々に発表したのは中華まん。一年かけてバージョンアップしたのだ。

中華まんシェアトップの井村屋と共同開発。「約20億円投資しました。ファミマさんとともに社運をかけています」(井村屋開発部・花井雅紀さん)と、新商品のために、井村屋は三重県津市の工場に巨大なラインを新設した。その新しい製造ラインでは、ソーセージのような具が包まれて、丸められ、頭がキュッとひねられていく。今回の改良でこだわったのは、肉の量を増やした具の存在感と、もっちりした食感の皮。目指すは中華街レベルの肉まんだ。

満を持してリニューアル第2弾が始まった。主役は「肉まん」に次ぐ人気ナンバー2の「ピザまん」。そのプレミアムバージョンを作ろうというのだ。

井村屋の開発担当者、開発部の小林伸也さんが試作品を持ってきた。生地に全粒粉を加え、チーズは贅沢に4種類も。さらにこれまでにない具材感を出そうと、ベーコンを初めて入れた。だが、試食した食一筋11年、ファミマのファストフーズ部・木内智朗マネージャーは「スモークが弱い。たっぷりベーコンで攻めてないと厳しいな」。もっとプレミアム感を出してほしい。小林さんに厳しい宿題が課された。

「正直、自分でも作っていて、お客さんへの驚きがない。表現ができていない」(小林さん)

三重の工場に戻った小林さんはプレミアムピザまんの改良に取りかかった。ベーコンを炒め始めた小林さん。地元のイタリア料理店でベーコンのうまみを引き出す方法を伝授してもらったからだ。

コストはかかるが、ひと手間かけることにしたのだ。炒めて出た油も重要。これをトマトソースに加えることで、ベーコンのスモーク感を生かせるのだ。

東京からファミマの木内がやってきた。小林さんの改良にめどがついたのだ。

「すごいね、これ。ベーコンの感じがすごくよく出ている。本当に頑張って頂いて、ベーコンの香りを最大限引き出して頂きました」(木内)

こうして自信作が出来上がった。3日後、東京・池袋のサンシャイン60にあるファミリーマート本社。社長の澤田による最終チェックだ。

「もっとでかいともっといいね。『ワオ!』というくらいでかいとインパクトがある。サイズは1.2倍で、値段は1.5倍。俺の中では計算がしっくりいかない」(澤田)

澤田が指摘したのは、通常品(130円)との価格の差だった。

「お客さんは68円の違いを認めないと思うよ。値段を上げるって、ものすごく重要なこと。堂々と上げられるものを作らないといけない」と、まさかのダメ出し。

「厳しいご指摘ですね。68円の価格差お客様が見て分かる、食べて分かる設計にしなさいというご指示。そこを変えようと思います」(木内)

さらなる試行錯誤の末、「ベーコンたっぷり ファミマプレミアムピザまんが誕生した。

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