「キレる老人」が増えているのは本当か? 精神科医が徹底解説

 

社会のIT化と孤独

さらに近年のハイテク化個人情報保護傾向も、ますます高齢者の「見捨てられ感を強くしているのではないだろうか。

まだ高齢者ではない私ですら、数多くのパスワードが覚えられずイライラすることが本当に多い。役所や銀行でも手続きがあまりに煩雑過ぎかつ本人でなければ何も事が進まない。ネットが使えなければ電話と言うことになるが、たとえばコールセンターにかけても、オペレーターになかなかたどりつけず怒鳴りつけたくなる気持ちもわかる。まして現役時代に相応の社会的地位で活躍していた人ならば、誇りが傷つけられるのも無理はない。

年齢層によるIT・情報格差は数年前の比ではなく、世の中の流れについていけない高齢者は、すでにその段階で社会的な姥捨て」になっているともいえる。

ただ、脳神経の問題ももちろん忘れてはならない要因だ。脳は年齢に従って、大脳皮質の萎縮や脳血管の動脈硬化、ひどい場合は脳梗塞などによって機能が衰えていくものである。しかし、現代になって高齢者の脳の衰え方が変わったわけではない。変化しつつある現代の社会環境に対する脳の反応が、今は「キレる」という現象なのだろう。

年齢を経ると、人間の性格はどのように変化するのであろうか。理想的なのは、角が取れて人間が円くなり、いわゆる「好々爺」となるパターン。あるいは逆に、人格者が年齢とともに困った人になっていくこともある。ただ昔から高齢者の性格変化には、「性格の先鋭化」と呼ばれる現象がよく見られる。若い頃の性格特性が高齢になるにつれてますます目立ってくる現象だ。若い頃気が短かった人が、ますます短気になってくるのが良い例だろう。もちろん、「性格の先鋭化」、すべての高齢者に当てはまるわけではない

print
いま読まれてます

  • 「キレる老人」が増えているのは本当か? 精神科医が徹底解説
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け