人手不足の保育園を闇に染める「補助金不正受給」の実態

 

多額の補助金が認可保育園には流れ込む

保育行政や補助金に詳しい社労士に話を聞くと、例えば0歳児保育には「月間およそ40万前後」の費用が発生しているという。

「少なからず、保育園には0歳児一人当たりに21万円の補助が出ます。ただし、これをするには、0歳児ならば3人に対し、常勤1名の保育士が必要です。1歳児から2歳児は6人に1人の常勤保育士がいることが目安になります」(社労士談、以下同)

R保育園の規模では、どの程度の保育士が必要ですか? と問うと

「100人規模の保育園で、0歳児は8名~10名程度、1歳児2歳児は合わせて30~40人規模ですから、少なからず、12人は常勤の保育士が必要です。ただ、これは最低でこの保育を12人でやろうとすると、8時間労働であれば交代の必要がありますから、もっと保育士が必要です」

理想的な保育士さんの数は?

「だいたい15人、今は保育士が少ないですから、難しいでしょうが、パート勤務などの保育員の数を増やして対応するしかないでしょうが。常に15人を稼働させても完全なブラック状態になりますね。シフトを組んで交代勤務にするとすれば、20人以上は雇い入れないと回らないですよ」

概算でも予想でもよいので、この規模で補助金なんかはどのくらいもらえるんですか?

「正確にはわかりませんが、規模としては補助金だけでも2,000万円はくだらないでしょう。行政としても、待機児童の問題もありますから、認可保育にはジャブジャブと補助金を投下しますよ」

これについては区行政に問い合わせたが、良き回答はもらえなかった。彼らも彼らで、不正があってもそれ自体は横行しており、厳密に取り締まれば、多くの保育園が立ち行かなくなるから、結果的に受益者である園児やその保護者が行き先を失うとして、緩くやっているという回りくどい説明であった。

“おいおい、そりゃ腐ってねぇーか”

保育園の入所や募集、園児の数は毎年の保育園側の申請に基づいて行政がこれを決める。この地区でも、保育園側から、「保育施設の基準」に基づく職員数や設備の増改築などについての報告書を受け、これに基づいて「募集人数・園児の定員」を定めて募集を行う。

つまり、保育士の数で園児の数がほぼ決まるのであり、保育士が1人いないだけで受けられる補助金収入が減るのである。

実際、R保育園は、常勤の保育士は9名であり、100人規模の保育園としては、保育士の数は基準に満たない

但し、短時間のパート勤務の有資格者(保育士)を足せば、100人規模での運営基準には足りるのである。

つまり、短時間のパートやほぼ常勤に近いシフトのパート保育士を常勤として報告したり、実際は系列他園にいる保育士を勤務実態がないのに、R保育園にいることにすれば、R保育園は実際は基準に満たない状態でも施設の大きさに見合った園児を入所させることができるのだ。

これには、他園が狭かったりする事情があり、結果保育基準には、園児1名あたりに必要な面積というものもあるため、施設の設備や大きさによって受け入れられる人数に制限があるのだ。

よって、新設で保育基準を意識して設計建築したR保育園は、多額の補助金を稼ぐことができるドル箱施設であり、ここでの保育士不足は経営の大きな損失になるのである。

ただ、あまりに不正が横行する状態に事務長とも言えるM氏はその発覚を恐れ、事務処理の忙しい5月までを目処に辞職の決意をしたのだ。彼は、前回の「伝説の探偵」がすでに、経営陣の知るところに至り、書類の破棄や訂正修正の申告などをするために、3月中は自身の仕事(本業)をせずに、R保育園に通い詰めになっていることへの不満を私に漏らした。

「自業自得だが、経営陣は実際の書類がどうなっているかもわかっていないはずです。それよりは補助金がほとんど減らないことに安堵していると思います。アイツら子供のことなんてどうでもいいんですよ、それより、国が落とす金が目当てなんですよ。でも、バレて問題になれば、詐欺になるでしょ。そうしたら、園長と私はトカゲの尻尾になるわけです。だから早々に引き上げますよ。辞めていく保育士さんは正解です」(M氏談)

書類上は募集可能人数通り保育士が常勤で勤務していることになっており、今年度も多くの園児を迎え入れたR保育園だが、その実態は、Y園長のパワハラや園内で起きた窃盗事件を背景に、職員が4人以上辞めており(内1名は不当解雇)、その内有資格者はおよそ3名は有資格者である。

ただ、職員募集によってその補填は行われているが、その全員が有資格者ではないパートの職員となる。

print
いま読まれてます

  • 人手不足の保育園を闇に染める「補助金不正受給」の実態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け