なぜ、ファミリーマートは異業種の「ドンキ」の手を借りたのか?

 

コインランドリーとのコラボ店も

コインランドリーとの複合店も、洗濯物を洗っている間に買物ができて時間の有効活用になると、新しく提案している。仕上がるまでの間、イートインでコーヒーを飲んで待ってもらってもいい。

市原辰巳台西二丁目店

市原辰巳台西二丁目店

今年3月、千葉県市原市に「ファミマランドリー市原辰巳台西二丁目店」を既存のファミリーマートの駐車場を改装して出店。コンビニの客足が鈍る雨の日に、顧客数が1.5倍に伸びた。

コインランドリー外観㈰

杉並永福四丁目店

そこで5月には、東京都杉並区にコンビニとの一体型店舗「ファミマランドリー杉並永福四丁目店」をオープン。

洗濯乾燥機3台、洗濯機2台、乾燥機4台を揃え、料金は洗濯乾燥機45分1,000円が基本となっている。

地元の老舗書店とのコラボから産直品を揃える店まで

書店と一体型の店もあり、兵庫県加西市に17年7月にオープンした、地元の老舗書店である西村書店とコラボした店では、200坪を超える店舗に約10万冊の本を揃えている。

西村書店-001

24時間営業で、通常のコンビニの商品のほかCDなども買えイートインやキッズスペースも擁している。ちなみにこのコラボ店は、地域に3店ある西村書店の店舗で本店にあたる。

このほか、通常のコンビニでは置いていない、医薬品生鮮食品産直品などを買うことができる地域のニーズに応えた店も、コラボによって続々とオープンしている。

例を挙げると、ドラッグストアーとの一体型店舗「ファミリーマート+薬ヒグチ淡路町店」(東京都千代田区)、スーパーとの一体型店舗「ファミリーマート+サンプラザ南国下末松店」(高知県南国市)、JA全農の生活事業であるAコープとの一体型店舗「ファミリーマート+JA遠中サービス」(静岡県周智郡森町)などがある。

一方で、2014年7月にオープンした東池袋4丁目店でのフジオフードシステム「まいどおおきに食堂とのコラボ店は、コラボが解消されて別の場所に移転している。

コンビニと外食が一体化した、というよりもコンビニの中に飲食店があるユニークな「東池袋四丁目食堂」はイートインの進化形として注目されたが、その跡地にはイオン系のミニ食品スーパー「まいばすけっと」が今年4月にオープンした。

また、第一興商とコラボした「ファミリーマート+カラオケDAM」は、14年4月に蒲田駅前南口店をオープン。その後、千葉県松戸市の松戸栄町西四丁目店、大分県別府市の別府浜町店と2店を加えて計3店を営業しているが、当初の3年間で30店に増やす計画には全く届いていない

コンビニで買った飲食物をカラオケに持ち込むことができる店になっていて、カラオケ店員が調理をしなくて済み、かつコンビニの売り上げも取れる合理的な提案だったが、実際に運営してみると一体化して多店舗展開するほどのメリットはなかった模様だ。

実験的なコラボ企画に果敢に挑み、外食とのコラボのように上手くいかないようなら止めて、別の組み合わせを探す。そういったトライ&エラーから一体型の最適解が見つかるだろう。

ファミマ以外のチェーンとの温度差

他業種とのコラボ店は、他のチェーンではファミリーマートほどには熱心でないように見受けられる。差別化の方法論で大手3社の違いが出ている。

ローソン異業種の買収にむしろ熱心だ。2010年12月にCDや書籍のHMVジャパン、14年8月にシネコンのユナイテッド・シネマ、14年10月に高級スーパーの成城石井をそれぞれ傘下に収めて、グループ化によりシナジー効果を狙っている。

また、美と健康に焦点を当てた「ナチュラルローソン」、100円均一「ローソンストア100」と、地域特性に合わせた姉妹ブランドを開発して、立地によって使い分けている点でも路線の違いが見える。

ただし、ドラッグストアとのコラボ店舗には執心で、業界2位のツルハと業務提携して、店舗を出し始めているが、17年12月18日の日本経済新聞の報道によると、仙台市若林区と東京都杉並区に出店している店舗が軌道に乗ったため、今後3年間で関東に100店を出店する計画という。

ローソンは2003年より調剤薬局併設型を開発し、10年8月により本格的に取り組むため調剤薬局のクオール薬局と提携して、東京都港区に「ナチュラルローソン城山トラストタワー店」を出店。その後、35店ほどにまで増えている。

美と健康は、ローソンが取り組むテーマの1つで、ドラッグストアーや調剤薬局との併設型店舗は、結果的にファミリーマートと被っているが、位置づけが異なっている。

一方でセブンイレブンは、17年4月にセイノーホールディングと提携して高齢者など買物に出掛けるのが困難な人を対象に宅配サービスの強化を打ち出した。

また、シェア自転車に熱心で、17年2月にドコモ・バイクシェアと組んで「bike share」、17年11月にソフトバンクグループと組んで「HELLO CYCLING」を展開しており、首都圏から順次拡大中だ。

セブンイレブンの場合は、異業種との一体型店舗をつくるよりも、既存の店の機能強化集客力向上のために、コラボを行っている。

苦戦するコンビニ業界がつかんだ「成長ビジネス」とのコラボ

コンビニの店舗数は全国で56000店を超えており、そろそろ飽和点に達するのではないかと言われている。ファミリーマートの今期に入ってからの既存店日商は3月こそ1.2%増と前年を上回ったが、4月~6月で前年を割っており、苦戦している。既存店客数は3月~6月ともに減っている。

「レジャー白書2017」によるとフィットネスクラブ市場は、過去最高の4480億円(前年比2.1%増)と好調で既存店の売上も堅調という。

ドンキホーテホールディングスの17年6月期の売上高は8287億9800万円(前年同期比9.1%増)となっており、今年はそれをも上回る過去最高の業績となる見込みだ。

厚生労働省の発表によれば、全国のコインランドリーの数は1996年の9206店が2014年には1万6693店に達している。そろそろ2万店を超えると推計される成長ビジネスだ。

ファミリーマートはフィットネス、ドン・キホーテ、コインランドリーなどといった成長ビジネスとコラボすることで、競合他社ばかりでなく自社のカニバリズムを避けて既存店の売上を増やそうとしている。

「様々な一体型店舗の効果を検証し、広げられるものは全国に広げたい」(前出・篠崎氏)としており、一店一店の中身を磨き、質の追求で難局を打破する目標を立てている。

全国どの店も似ていたコンビニが、チェーンの独自性、さらには一店一店の個性を主張し始めている。ファミリーマートの取り組む異業種コラボ店は、そうした流れの先端に位置づけられよう。

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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