先進国でデフレは日本だけ。20年の失策を生んだ大企業のドケチな経営

 

7月31日、これまで5年に渡り行われてきた大規模な金融緩和の修正を発表した日銀の黒田東彦総裁。デフレ脱却の掛け声の元進められてきたこの政策、目標としてきた2%の物価上昇も未だ達成されていませんが、「失策」だったのでしょうか。これを受け、「そもそも金融政策でデフレから脱却しようという発想そのものが間違い」とするのは、元国税調査官にして経営コンサルタントの大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』でその論拠を示すとともに、「本気でデフレ脱却したいのならすぐすべきこと」について記しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年8月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

なぜ日銀の金融緩和はデフレに効かないのか?

7月31日、日銀の黒田総裁が、金融緩和の継続を発表しました。長期金利の上昇を容認するなどの若干の修正はありましたが、これまでの大規模な金融緩和は継続するということです。

黒田バズーカと呼ばれる日銀の大規模な金融緩和策が始められてから5年も経つのですね。2%の物価上昇を目的に始められたこの金融緩和。当初は、すぐにでも目標達成するようなことを言われていましたが、5年経ってもまだ達成されず。今となっては「達成する見込みも立っていない」という状況です。

そもそも、金融緩和でデフレを脱却しようという発想そのものが大きな間違いなのです。それは、バブル崩壊後の日本経済のデータをちょっと眺めてみれば、誰でもわかることなのです。

バブル崩壊後の日本経済は、デフレに苦しめられてきました。そして「デフレのために、人件費は下がり、国民生活は苦しくなった」「だからデフレを脱却すべし」という事が、さかんに言われるようになりました。が、が、この考え方そのものが実は間違っているのです。

「デフレになったから人件費が下がった」のではなく「人件費が下がったからデフレになったのです。それは、少しデータを調べれば誰でもわかります。

デフレの原因は「賃金」

日本の平均給料の推移と、物価の推移を見比べてみれば、それは一目瞭然なのです。国税庁のデータによると、日本の給料は、この20年間で20ポイントも下がっているのですが、給料が下がり始めたのは平成9年なのです。しかし物価が下がり始めたのは平成10年です(金融庁データ)。つまり給料の方が早く下がり始めているのです。これをみると、デフレになったから給料が下がったという解釈は、明らかに無理があります。

現在の日本のデフレの最大の要因は、賃金の低下と捉えるのが自然でしょう。また理屈から言っても、これは自然な考えのはずです。給料が下がったので消費が冷え、その結果物価がさがったというのが、ごく当然の解釈になるはずです。

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