テスラ社のイーロン・マスクに7兆円もの資金を提供する組織の名

 

しかし、今回の件は、会社とは何か上場とはどんな意味を持つのかを考えさせられる良い機会になりました。これがうまく行けば、Facebook、Amazon、Googleが非上場化を真剣に考え初めても全く不思議はありません。

この3社にとって、株式市場はすでに資金調達のための道具ではなくなっており、株価が意味を持つのは、社員にインセンティブを与えるストックオプション(もしくはストック)と、現金では不可能なほどの(株の新規発行による)大型買収の時のみです。

テスラがやろうとしているように、非上場になった後にも(比較的自由に)株を売買出来るようにするのであれば、非上場にしてしまった方が経営しやすいのは事実です。

こうなると、テスラのように非上場化した会社の株を取引するための(NASDAQのような)市場が作られても不思議はないと思います。SEC(証券取引委員会)の厳しい規制から逃れるには、Accredited investor(適格投資家)のみが売買出来る「閉じた市場」にする必要があると思いますが、ニーズは十二分にあると思います。

そして、そんな市場が出来れば、UberやSlackのようなユニコーンも、NASDAQのように厳しい規制のある市場に上場するよりは、そんな閉じた市場への上場を選択する可能性が高いと思います。

【追記】このメルマガの配信順位をしているときに、イーロン・マスクがファンドの提供者がサウジアラビアの政府系ファンドであることを公表したので、追記します。「Musk says Saudi fund wants to take Tesla private, justifying his ‘funding secure’ tweet」によると、

  • 非上場化に必要なお金は全てサウジアラビアが提供する
  • 借金ではなく、既存株主から株を買い取る形で行う
  • 3分の2の株主はそのまま株を持ち続けると期待する
  • サウジ以外の投資家にも声をかけている

とのことです。一株$420だと、株価総額は$70billion7兆円強)になりますが、3分の2の株主が株を持ち続けることを選択すれば、必要なお金は$23.3billionです。サウジアラビアの政府系ファンドは$500 billion以上の資産を持つので(参照)、全てをカバーすることは十分に可能です。

しかし、そうなるとサウジが40%近い株を持ってしまうことになります(すでに5%を所有しています)。それはそれで少し問題なので、私の予想するに、ソフトバンクやアップルに声をかけて、もう少しバランスの良い株主構成にしたがっているのだと思います。

いずれにせよ、これは前例のない巨額な非上場化であり、いかにもイーロン・マスクらしいと言える動きです。

image by: shutterstock

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年8月14日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込864円)

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