会社が従業員に対していつでもできる退職勧告ですが、対象とした従業員が自由に意思決定できない状況下で行った場合、無効になるのはご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんが、過去の裁判で「退職強要」と判断された判例を分析、その中でも身近で起こる可能性の高い「4つの例」を挙げ解説しています。
御社では、退職強要していませんか?
事業を長く続けていると、当然、景気の変動、得意先や受注量の減少、ライバル企業の出現等あると思います。経営が厳しくて、従業員に辞めてもらわなければならない時もあるでしょう。また、ブラック社員やモンスター社員と呼ばれるような、一刻も早く辞めさせたい従業員がいるかもしれません。
そのような時であっても、即「解雇」というのは難しい。「解雇」が簡単にはできないことは、みなさんもご存知だと思います。
解雇を行うためには、「客観的に合理的な理由」と「社会的相当性」が必要です。懲戒解雇を行うためには、さらに、就業規則に具体的な懲戒解雇の事由が記載されていなければなりません。これらの条件がそろっていない「解雇」を行えば、裁判などによって「解雇無効」と判断されます。
ですから、通常、従業員に辞めてもらいたい時には、「辞めてもらえないだろうか?」という伺いを立てます(言い方は、もっと厳しいものでしょうが…)。これが、「退職勧奨」あるいは「退職勧告」といわれるものです。会社側が、従業員に対して退職を促す行為です。
この「退職勧奨」は、会社側は自由に行うことができます。「客観的に合理的な理由」や「社会的相当性」などといった、ややこしいものは必要ありません。まったくの自由に行うことができます。いつでも、大した理由など必要なく行うことができます。
しかし、従業員側は、これに応じる義務はありません。従業員自らの意思で、自由に決断することができます。退職勧奨に応じるか断るかは、従業員次第、好きに決断すればよいのです。逆にいうと、自由に決断できない状況で行った「退職勧奨」は、「退職強要」として無効となります。