原料が輸入では話にならない
第3に、いくら輸出を誇っても、その原料を輸入に頼っているのでは話にならない。図表2の上位陣の中では、すでに述べたように、ビールをはじめ麦を使う酒はほとんど輸入原料に頼っているし、【3.穀物等】は小麦粉=72.3億円、即席麺=58.4、うどん・そうめん・そば=42.2などだが、ほとんどすべての原料が輸入である。
【5.ソース混合調味料】【11.菓子】も同様。さらに、【13.播種用の種】は、今では国内種苗会社が広大な隔離圃場を確保して採種することが難しいため、9割以上を海外で採種して日本に持ち込み、加工・包装して輸出しているだけの、言わば加工貿易にすぎない。
この表以外でも、国内農産品と言える品目を見つけるのが難しい。味噌と醤油がそれぞれ71.5億円、33.3億円も輸出されているのを見れば、「おお、日本食の素晴らしさが世界に理解されつつあるのだな」と思いがちだけれども、前出「日本農業新聞」によれば、原料のほとんどは輸入された大豆や小麦。「国内製造する味噌に使われる大豆の9割は輸入品。輸出する味噌でも割合はほとんど同じ」と、全国味噌工業協同組合連合会も認めている。また醤油製造に使われる大豆は年間18万トン(16年)で、このうち国産はわずか6,000トン=3%(しょうゆ情報センター)。
ごま油=58.7億円も、ほとんどがナイジェリア、パラグアイなどからの輸入原料に頼っていて、自給率は0.1 %しかないので、やはり加工貿易で、日本農業の強化とは無関係である。
従って、農林水産物の輸出が増えることが農家の収入をアップし日本農業の体質を強化するというのは、物事の半分しか見ないようにしてデッチ上げられた虚構にすぎない。野党とマスコミがこういう嘘を1つ1つ潰してこなかったから、安倍首相がいつまでも大きな顔をすることになるのである。
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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2018年9月10日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。
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