作業服の「ワークマン」が始めた新業態に若い女性も殺到する理由

2018.09.25
 

低価格で商品が提供できる理由と今後の課題

年商797億円(2018年3月期、前年同期比7.3%増、既存店4.7%増)のワークマンは作業服業界のガリバーだが、シェアは市場の3割ほどでまだまだ伸ばせると考えている。しかし、低価格のアウトドアウェアは全く未開拓な市場で、より以上の成長性が見込めるというのが同社の見立てだ。

なぜ、安く高機能の商品が提供できるかというと、人件費、不動産価格の安い海外で自社生産をしているからで、中国はもちろん、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、ベトナムに工場が広がっている。

中間流通の卸売、商社を経由していないので、マージンが省かれ、安く提供できる。

商品企画から生産、販売まで一貫して行うSPA(speciality store retailer of private label apparel)=製造小売業の業態は、GAP、ZARA、ユニクロなどが知られるが、“作業服のユニクロ”の異名で呼ばれるワークマンも、これを実践している企業である。

しかし、ファストファッションであるGAP、ZARA、ユニクロとの違いは、基本流行を追うファッション商品ではなく、機能性重視の実用衣料であることだ。どちらかというと下着メーカーのグンゼ、ワコールに近い。

グンゼやワコールにも、デザインが進んだ結果として、アウターとしても着用できる商品群が存在する。

グンゼ、ワコールが下着業界のガリバーで、デイリーに使う商品ゆえに景気に関係なく安定しているのと同様に、職人がデイリーに使うワークマンも安定した企業だ。

しかもワークマンの場合、「ワークマンプラス」により、低価格アウトドアウェアというブルーオーシャンが見えてきた。「ワークマンプラス」は年内にもう1店を出店する予定だが、これも順調に売り上げるようだと、数年以内に100店舗の出店も可能だろう。

現在、ワークマンはデザイナーを雇っていないが、アウトドアの分野で大きく伸ばそうとするなら、もう少しデザイン性を高める必要があるのではないだろうか。優秀なデザイナーを採用すれば、さらに成長は加速する。課題があるとすれば、それくらいだ。

photo by: 長浜淳之介

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

この著者の記事一覧はこちら

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

print
いま読まれてます

  • 作業服の「ワークマン」が始めた新業態に若い女性も殺到する理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け