作業服の「ワークマン」が始めた新業態に若い女性も殺到する理由

2018.09.25
 

「ワークマンプラス」が立ち上がるまで

それでは、どういった経緯で「ワークマンプラス」は立ち上がってきたのだろうか。

4、5年前からワークマンでは、人口密度の低い地方、特に東北で、一般の高齢者の顧客が増えていることに着目。理由を分析したところ、過疎地ではそもそも衣料品を買える店が少ないことに気づき、コンビニやスーパーも出店を嫌がる地域に出店を加速。小商圏の高齢者が普段着としても着られるように、作業着を改良していった。

従来のワークマン店舗

従来のワークマン店舗

ワークマンの店は全国に827店あるが、その結果、口コミでバイクに乗る人たちにも購買層が広がり、既存店に一般の消費者が普通に来店するようになってきた。さらには、ストレッチ素材のレインウェアが、釣り、登山、ハイキングのようなアウトドアにも使えるということで、スポーツ全般にユーザーが広がりを見せてきた。

一方で、市場の流れとして、従来の地味な作業服を好んで着る人が、特に若い人では少なくなってきた。そうでなくても3K(きつい、汚い、危険)と言われ、若い人が集まりにくい建設などの現場では、機能性を備えていればおしゃれな色や柄の服装を容認しようという方向に変わってきている。

これを、“作業服のスタイリッッシュ化”と作業服メーカーでは呼んでいて、従来型のユニホームにこだわってきた現場監督も、服装自由化のトレンドに抗えなくなってきている。国の事業のような大きな現場では今でも従来型ユニホームが根強いが、それ以外では若い人を集めるためにスタイリッッシュ化した作業服が認められてきた。

デニムの上下セットなど、かつての作業服では考えられなかったが、今のファッショナブルな作業服では、一番の売れ筋である。作業服とカジュアルウェアの間にあった垣根が、溶解してきたのだ。

浮上した「一般向けブランド」出店のアイデア

そこで、一般ユーザーに人気の高い、3ブランドに絞ってアウトドアウェア専門店を出店してみてはどうかというアイデアが浮上してきた。

1号店を設けた東京郊外の立川は周囲に団地も多く、モノレール沿線には大学、高校、専門学校など学校も数多くあって部活などにスポーツ用品の需要が見込める。近くの国営昭和記念公園はジョギングやサイクリングのメッカにもなっており、泉と柴崎の市民体育館はモノレールの駅名にもなっていて容易にアクセスできる。さらに、集客力の高い「ららぽーと」に入居しておりアウトドアウェアを販売するには好立地と見受けられた。

ららぽーと立川立飛

ららぽーと立川立飛

「アウトドアやスポーツのブランド、バイク用品は機能性が高いので、値段も高いのです。スポーツを始めてみたいと思っても、いきなり高いウェアを買うのはハードルが高い。そういった時に、ワークマンプラスなら安価で買えます。アウトドア入門着として、使っていただければと提案しました」(前出、鈴木氏)。

要は、運動不足なのでちょっと走ってみたい、本格的な登山までは難しいけれどまずはハイキングに行ってみたいと考えているような、アウトドアスポーツのライトユーザー向けに、低価格で機能性ウェアを売る専門店が意外にも存在していないというのが、「ワークマンプラス」の着眼点なのである。

ゴールドウイン、ミズノ、デサントのようなアウトドアやスポーツの専門メーカーより半額以下の価格を目指す。

まず「ワークマンプラス」の商品を着てアウトドアにチャレンジしてもらい、スポーツ人口の裾野を広げる

これから2020年の東京オリンピックに向けて、健康増進が日本の国家的課題であり、東京都の課題でもある。そうした時流にまさにマッチした提案ではないだろうか。

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