交渉のプロが伝授。相手を気持ちよくさせる、オウム返しの使い方

 

専門家と対峙し「押し黙ること」の2つの意味

しかし、もし、こちらはスピーカーで、相手側の専門家やエキスパートと交渉の場で対峙しないといけない場合はどうすればいいのでしょうか。その場合の最良と考えられる対策は、「押し黙ること」です。これには2つの意味があります。

一つ目は、「あなたのご説はごもっともですが、交渉の場ではあなたを直接相手にはしません」というメッセージとしての沈黙です。これはうまく使うことが出来れば、相手側の専門家がエキサイトするのを制するために効果的な方法なのですが、その“専門家”の性格によっては、「侮辱された」と騒ぎ出し、場をかき乱す要因になるかもしれません。私のモットーとしては、参加者全員に対して敬意を示して仕事を行うというものがありますので、この相手を無視するような「黙る」はとても気を付けて用います

二つ目の「黙る」は、相手が言っている内容が理解できない時の手段です。相手が言っていることが「わーーーー、なんだこれ?」と話の途中で全く理解できなくなり、少しパニックになってきたと感じたら、変に知ったかぶりをして何か発言するよりは、黙ってしまいましょう。その上で、その専門家に「私の勉強不足で、仰っている内容がよく理解できませんでした」と素直に認め、その上で、まず、相手がどう考えるかなんて考えずに、分からないことは、いちいち尋ねましょう。

以前にも述べましたが、いちいち質問することで、「あ、分からないなりに理解しようとしているんだな」という“前向きの感情”を相手に植え付けることが出来ます。相手からの回答や説明を一通り聞いたら、そこで一旦休憩を提案し、こちらサイドの“専門家”に内容と理解度の確認を取ります。

物理的に交渉の場に同席している場合は、相手もその話を聞いていますので、相手の提案内容をシンクロすることはさほど難しくはないはずですが、専門家が物理的にその場にいない場合は、電話やメールなどでの確認になります。その場合は、ちゃんと「どのようなことを相手は披歴していて、自分は何が分からないのか」をこちらサイドの専門家に説明できないといけません。

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