なぜ外国企業なのか。日本には一連の水道業務をパッケージで受注できる企業が見当たらないからだ。
これまで、自治体が必要に応じて水処理機器企業、エンジニアリング企業、商社などに業務を委託してやりくりしてきたが、全体をまとめるコーディネーター機能が不足している。それゆえに、いくら政府が旗振りしても、水道事業の輸出は、ままならなかったのだ。
水メジャーは、部品・機器製造から、装置設計、運営・保守・管理に至るすべてのサービスを、包括的に提供できる。自治体は実績のあるフランスやイギリスの企業を選ぶ可能性が高いだろう。
水道法改正案は、衆院では通常国会期間中の今年7月5日、スピード審議で通過。参院は今国会で審議され、今月5日の本会議で可決、衆院に送り返され、6日にも成立する見通しだ。
法案の中身を見てみよう。昨年8月に厚労省が公表した「水道法改正に向けて」で、次のように説明されている。
水道の経営について、市町村が経営するという原則は変わらない。地方公共団体が、水道事業者等としての位置付けを維持しつつ、水道施設の運営権を民間事業者に設定できる方式を創設。
運営権が設定された民間事業者は、設定された運営権の範囲で水道施設を運営。利用料金も自ら収受。地方公共団体は、運営権者が設定する水道施設の利用料金の範囲等を事前に条例で定める。地方公共団体は、運営権者の監視・監督を行う。
これは何を意味するのか。地方自治体が施設を保有、経営し水道料金の上限を条例で定めるが、水道料金そのものは運営の権利を買った民間企業が自らの収入として徴収し、維持管理コストを払って、利潤を追求するということだ。
契約期間15年以上の「コンセッション方式」と呼ばれるシステムで、「民営化」ではないと政府は言う。だが、企業にリスクの少ない新手の民営化といえなくもないだろう。15年以上も一つの企業に任せてしまったら、自治体側にはチェックする機能がなくなり、企業の言いなりになってしまう。
コンセッション方式は、公共施設の建設、維持管理、運営に、民間の資金とノウハウを活用するPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の一形態だ。
昨年6月のPFI法改正で、大災害に見舞われた施設の修復費用を企業が加入した保険で賄いきれない場合には自治体が補完する契約が可能になっている。
政府は自治体に対しても、水道施設の運営権を民間企業に売った場合、地方債の元本一括繰り上げ返済の利息が免除される特典をつけて、コンセッション方式による民営化を促そうとしている。
要するに、PFI法や水道法の改正によって、自治体、民間企業ともに受け入れやすい条件を整えようとしているのだ。








