池田教授が一刀両断。いまさら国際捕鯨委員会を脱退する日本の愚

 

捕鯨国に友好的だったカナダは、自国内の先住民・イヌイットの捕鯨をIWCの許諾とは独立に行いたかったという理由からか、あるいはIWCの非科学的な議論がばかばかしくなったのか、モラトリアムが採択された1982年にIWCをとっとと脱退してしまった。カナダは京都議定書からも2011年に正式に脱退しており、国際的なペテンに引っかからない真に賢い国である。日本も、1982年にカナダと歩調を合わせて非科学的なIWCから脱退すればよかったものを、今頃になって脱退するとは、世界情勢を見るに真に鈍である。

すでにあちこちで書いているように、最も環境に負荷をかけない食料調達の方法は、野生の動植物を持続可能な方法で利用することだ。従って鯨の資源量を調査して、持続可能な範囲で捕鯨を行うことは真に合理的なのである。もちろん、野生動物を持続可能な範囲で利用するためには合理的なルールが必要だ。もともとIWCはそのための機関であったはずだ。例えば、南半球(主に南氷洋)のクロミンククジラはIWCによれば少なくとも50万頭を超えており、多少捕獲しても資源が減少する懸念はない。従ってIWCの商業捕鯨モラトリアムは非科学的だという日本の主張は、そこだけを見る限り真に尤もである。しかし、後述するように話はそう簡単ではないのだ。

もはや補助金なしに成り立たない商業捕鯨

日本の鯨肉の消費量は1960年代の半ばまでは多い年で年間20万トンを超えたが、60年代後半から徐々に減り始め、IWCが商業捕鯨モラトリアムを採択した1982年前後には5万トン弱まで落ち、1988年に商業捕鯨を中止して以来、数千トンの水準で推移している。鯨肉を日常的に食べる人がほとんどいなくなって、5000トンくらいの鯨肉が備蓄されている。商業捕鯨を再開しても鯨肉の消費が増える見込みは薄い。商売としては成り立たないと思う。

IWCに参加していれば「調査捕鯨」という名目で税金をつぎ込むことはそれなりに理屈が通るが、商業捕鯨に補助金を注ぎ込むというのは筋が通らない。それにもかかわらず、政府は捕鯨対策として2019年の予算に51億円を計上したとのことだ。政府自ら、補助金なしには商業捕鯨は成り立たないことを認めているようなものだ。IWCを脱退して商業捕鯨を再開しても経済的なメリットは全くない。それではなぜIWCを脱退したのだろうか。

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