こんな教師もいた。断腸の思いで退学にした生徒から届いたハガキ

 

いじめ問題に関しては熱血教師ドラマのように都合よい解決を望むべくもありませんが、教師たる者、被害者救済はもちろん加害者の立ち直りも念頭に置いて誠心誠意対応しなければなりません。今回の無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、著者の清川洋さんが教諭時代に直面した事例を紹介しつつ、いじめ問題解決における教員の役割を考察しています。

勤務校での「いじめ」問題

今から25年以上前のことです。私は、当時高校で2年生の担任をしていました。その高校は、喫煙、バイク乗車などの問題行動が多発し、勉強がやや苦手な生徒が少なくなく、私は大なり小なりストレスを感じながらも勤務していました。当時は良きにつけ悪しきにつけ元気のある生徒が多かったと感じます。今回は、その時期に、教師のあり方を考えさせられた事件について述べてみたいと思います。

具体的な内容は申し上げられませんが、自分のクラスのA君が公共の場で大変迷惑をかけ危険な行為をしました。私は朝からA君の事情聴取をしました。しかし、なかなか事実を認めません。A君は潜在的に能力のある生徒なのですがその分良くない方向にも力を発揮するタイプでした。教員の前では見せない姿が、陰に隠されているように思えました。

私はA君の問題行動の内容を把握していましたので、正直に言うように促しました。危険かつ多くの人に迷惑をかけた行為を認め、反省するようにと説きました。しかし、ふてくされた態度が続き、次第に反抗的になってきました。私は「許せない」「見逃せないという思いがこみ上げ、「お前はいつまでもそんな人間でいいのか!」と、大声で怒鳴りながら立ち上がりざまにテーブルを両手で思い切り叩きました。「向かってくるなら来い」という思いでいました。

ところがA君は突然涙を流し初めました。そして、「自分だってこのままでいいとは思っていないよ」とつぶやきました。私はホッとしました。A君の本当の姿に接することができたように思えました。それからは、素直にありのままを話してくれました。

その後、校長から懲戒指導がA君に申し渡されました。家庭訪問にいくと、素直な態度で課題をしっかりとこなしていました。御両親は学校の指導に御理解をいただき大変ありがたく思えましたし、「こんなご両親の元でどうして…」と思いました。

それから数日後、学校は保護者面談の期間に入りました。私のクラスのB君は少しひ弱な感じのする、おとなしく優しい感じの男子生徒です。思いを内に込めてしまうタイプなので、日頃から少し気にしていた子です。お母さんが面談にいらっしゃいました。

私は冒頭、「B君の様子で気になることはありますか」と問いかけました。するとお母さんは「少し前貯金が減っていることに気づきました。何かを買っている様子はないのですが」とおっしゃいました。これはただ事ではない、喝アゲ恐喝カンパだなと思いました。

翌日、B君を放課後に呼びました。「誰が相手でも絶対に仕返しなんてさせない」ことを訴え、ありのままの事実を話すように促しました。B君を苦しめていたのはA君でした。聞けば、お金を持ってくるように強要されること数回、さらに、体育の授業の後の教員の目の無いところで暴力を振るわれることも何回かあったことが分かりました。改めて貯金通帳を確認させ金額と時期を把握しました。B君はさぞつらかったことだろうと思いました。

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