「バイト炎上動画」問題で露呈した、外食大手チェーン店の脆弱性

 

どうして判断ができなくなっているのかというと、それは消費者がバカになっているからではありません。デフレ経済の中で、例えば寿司店の場合、回らないカテゴリの店で、「評判」や「板前の態度」などで「安全度」を図ることのできる店というのは、一般庶民には手が届かなくなっています。

そうではなくて、安くて手の届く外食というのは、ほとんど100%が大企業が回しているチェーン店になってしまうからです。チェーン店の場合は、板前の態度を見ようと思っても、例えば多くの回る寿司店では、寿司というのは裏の厨房でバイトや機械が握っています。板さんが握る部分もありますが、その場合はパフォーマンスを見せたり、板さんが営業したりする効果が計算されているわけで、100%板前が握っているなどというのは、廉価なチェーン店の場合はありません。

ですから、お客には「この店は清潔か?安心か?」ということが判断できないのです。調理のプロセスは、裏の厨房に隠されていたり、あるいはファミレスの場合は巨大なセントラルキッチン、コンビニの場合は郊外の大規模な下請け先の弁当工場などで作られているわけですから、いちいち判断はできません

では、消費者はどうやって食の安全を確認するのかというと、とにかく目をつむってブランドを信用するしかないわけです。有名な大企業がやっているチェーンだから、コンビニだからというブランドを頼りに「有名ブランドなら大丈夫だろう」という信頼をする「しか」ないのです。

ここに問題の核心があります。つまり、イメージとして企業の側も、消費者の側も「有名ブランドイコール安全と安心」という神話を信じており、またその維持に必死になるわけです。

本当に不衛生な行為が起きたかは怪しいのに、「不衛生行為を連想させる動画」だけで大騒ぎになるのは、この「安全と安心をブランドに丸投げしている構造があるからです。反対に、ブランドのイメージが傷つくと、今回の一連の事件のように騒ぎになるわけです。

では、大企業だから本当に安全を確保しているのかというと、それは確かにマニュアルは整備されているでしょうし、什器なども大量発注して高性能なものを使ってはいるでしょう。ですが、個人経営の寿司店などとは違って、訓練された板前が全部の寿司を握っているわけではありませんから、安全度というのは高度な感覚を持った現場の力で確保されているというよりも、マニュアルや機械で確保するということになっているわけです。

というのはどういうことかというと、食の安全の確保というのは、マニュアルを整備したり、そのマニュアルを守らせるために警察のパトロールのような権力行使をしたり、あるいは高性能な什器を安くまとめ買いするための交渉をしたりといった、本部の努力で実現するという経営思想があるからです。

個人経営の寿司店の場合は、食の安全を守るのは板前です。鮮度の高いネタを仕入れ、きちんと温度管理をして冷蔵し、正しい調理法で寿司を提供する、それには大変な努力が必要です。ノウハウも必要ですし、何よりも商売の姿勢として覚悟が必要です。ですが、その分だけ、収入という面でもちゃんと見返りがあります。また、お客からの親愛や尊敬も得られます。成功すれば、弟子を育てて支店を出させたり、暖簾分けして、事業を拡大することもできます。

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