私が幼少期を過ごしたアラバマ州は、映画の舞台となった場所。主人公2人の旅の最終地バーミンガムから、車で2時間ほどのハンツビルという町に住んでいました。
メルマガVol.092「大坂なおみ全米OP決勝で見えた、日本が報じないアメリカの闇」でYMCAのプールで起きた出来事を書きましたが、ジムクロウ法が廃止されて10年以上経った1970年代も、黒人は完全に「隔離」されていたのです。
ハンツビルでは、白人と黒人は住む場所が完全に分かれていて、学校も買い物をする場所も全て別。
私の家は白人居住区にあり、幸いにも差別されたという記憶はありません。しかし、裕福な友人(白人)の家には、黒人のメイドがいて納屋で生活をしていました。
また、当時、白人は完全に肉食で魚類といえばロブスターかシュリンプ。一方、黒人はチキンと魚のフライをよく食べていて、町で唯一の魚屋さんは黒人の居住区にあり、私の母は魚を買うために行っていました。
母が行くと黒人の店主は「ジャパンでは魚をどうやって料理するのか?」とか「ローフィッシュ(生の魚=さしみ)を食べるのは本当か?」とか、嬉しそうに話しかけてきました。
あれからもう40年近く経ちますが、いまだにアラバマ州には「ブラックベルト」と呼ばれる黒人居住地区が存在します。
そうです。黒人奴隷の歴史の爪痕は、今も続いているのです。ホントに根深い問題です。
それだけに「建前」だろうとなんだろうと、今回のアカデミーで、何人もの黒人の方が栄冠を手に入れたことは、米国にとってエポックメイキングな出来事だったと強く思います。そして、『グリーンブック』の栄冠が、南部に新たないい風を吹かせるといいなぁ、と期待しています。
image by: Tinseltown / Shutterstock.com
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年2月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー
※初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。
2019年1月分
- 母親の孤立化といじめの悲劇/「他人の足をひっぱる男たち」(11)(1/23)
- 「人」の命は重いが「医師」の命は?/「他人の足をひっぱる男たち」(10) ほか(1/16)
- ヤレる?ランキング?って何?怒/「他人の足をひっぱる男たち」(9) ほか(1/9)
※1ヶ月分540円(税込)で購入できます。
※『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2019年2月27日号)より一部抜粋