中国では、国家分裂扇動もテロと同様とみなしています。2005年には反国家分裂法が制定され、「台湾独立」の主張をすれば、摘発されることになりました。習近平政権になってからは、最高人民法院が国家分裂扇動をテロと同様に厳重に処罰すると表明しました。
つまり、中国にとって台湾独立派は重犯罪者なのです。万が一、中国が台湾を「平和的統一」した場合、台湾独立派や反中国派がどのような運命を辿るか、容易に想像がつきます。
ウイグル人と同じ強制収容、再教育、さらには臓器提供が待ち受けているわけです。そのことがわかっているため、台湾ではウイグル問題についての報道がさかんに行われていますし、習近平が主張する「一国二制度」も、台湾人はまったく信じていません。
● 一国二制度「絶対に受け入れない」 台湾の蔡英文総統が拒否
先の環球時報の社説についても、反中国色の強い自由時報は「《環時》:中國成功抑制宗教極端主義 不必理會西方標籤(『環球時報』:中国は宗教の過激主義の抑制に成功 西側諸国のレッテル貼りを気にする必要なし)」と、環球時報の報道を批判的に報じています。
日本人にはなかなか理解できないと思いますが、中国に併呑される危険性を抱えた国・地域は、人権消滅・民族浄化と隣合わせであり、その危機感は非常に大きいものです。日本に関しても、中国は最近、一部の学者に「琉球回収」を主張させるように仕向けており、いずれ「沖縄返還」を公言するようになる可能性が高いでしょう。
たしかにイスラム過激派によるテロは許せるものではありません。しかし、それに乗じて少数民族弾圧を正当化する中国のやり方には警戒が必要です。かつて9.11アメリカ同時多発テロ事件が起こった際も、中国政府は「テロ取り締まり」をお題目にチベットやウイグルへの弾圧を正当化しました。
その揺り戻しとして、中国のウイグル弾圧への国際的批判が高まりつつあった矢先のスリランカでのテロだったわけで、中国政府としては「渡りに船」とばかりに、自己正当化に走ったわけです。
とくに習近平政権は、大躍進政策や文化大革命など、多くの犠牲者を出した毛沢東時代への回帰を目指しています。私が米中貿易戦争を「自由」と「統制」、「民主主義」と「独裁」の対決だと考えているのはそのためであり、人類の未来を大きく左右する問題です。