地に墜ちた大英帝国の輝かしい過去。EU離脱問題の見えぬ「正答」

 

いまや離脱反対が多数の英国民

しかも今や多くの英国民は、EUと有利な離脱合意の条件が結べなくなることを知ってあわてふためいている。離脱中止を求めるオンライン署名は600万人に達し、3月23日には100万人がロンドンで離脱反対のデモを行ったという。最近の世論調査によると、離脱を決めた国民投票のやり直しを求める人は48%で、なおEU残留の反対派は36%。二大政党の保守党も労働党の多くの議員もEUのメンバーであり続けるべきだと主張し始め、下院議員の3分の2も同様だという。

にもかかわらず離脱に固執するのは「民主的な選挙によって示された民意をないがしろにすれば、政府が国民に約束したことは無視され、民主主義が破壊される」という強硬派がまだかなり保守党におり強行すれば党が分裂することを恐れているからだとみられている。

地に落ちる大英帝国の過去

しかし、メイ首相自身がEU残留派であると言う以上、身を賭して残留を説得するのが首相の役目になるのではないか。いたずらにEU離脱の好条件を探り3度も否決されるようであれば、議会を解散してもう一度国民投票をやり直すか、自ら身を引くのが筋だろう。迷走を続け世界からあきれかえられていれば、かつてのイギリスの栄光はますます地に落ちよう

イギリスには15世紀前後の200年間、世界を統治したヨーロッパの盟主だった誇りがあり、大陸のフランス、ドイツなどの実質的な統治下に入ることに抵抗があるに違いない。しかしブレグジットで迷走をし続け孤立してしまうようなことになれば、かつて世界の中心にいたギリシャ、ローマ、スペイン、ポルトガルのように結局イギリスも“その他一同の国”になってしまうのではなかろうか。

離脱してもイギリスは生き残れるという驕りが、イギリスをヨーロッパの孤児の道を歩ませることになり、世界からも見放されることにつながろう。そのことを理解できないイギリスの政界は歴史的な過ちを犯すことになってしまうだろう。

(TSR情報 2019年4月19日)

※参考情報

  • 25日付けの日経新聞にて、「英の欧州連合(EU)離脱の実現のメドが立たない状況を受け、英与党・保守党の議員でつくる有力組織「1922年委員会」が24日メイ首相に辞任時期を明らかにするよう求める方針を固めたと複数の英メディアが報じ、首相が同委員会の求めに応じる義務はない。反メイ派の思惑通りに辞任につながる可能性は低そうだ。」と報じられました。
  • 24日付けの日経新聞にて「英与党の反主流派、再びメイ首相降ろし 支持率急落で 「党首不信任」のルール変更図る」と報じられました。
    保守党の支持率は、10月末までの離脱延期を固めた10~11日のEU首脳会議を境に急落。欧州議会選の投票先を尋ねた各種世論調査では、4月上旬まで25%前後あった保守党の支持率は首脳会議後には15%強に下落しています。

image by: Lenscap Photography / Shutterstock.com

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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