シー・シェパードを敵に回した日本人ドキュメンタリー監督の闘い

 

果たして予想通り、現地メディア22社にプレスリリースを送っても、返信はありません。現地の有名メディア、例えば、「ニューヨーク・タイムズ」などは、当然、一般からのリリースなど1日100件は送られてくるはずです。特に、作品の性格上、内容が内容だけに簡単に彼らが来場するとは思えない。結果、地元メディアには無視されてしまいました。コロンビア大学での上映会なのに、スルーされるなんて、と自分の無力さに脱力しました。

それでも、学生をはじめ、観客には多くのニューヨーカーが来場してくれました。僕自身も席に座り、何度目かの鑑賞をしつつ、観客の反応を窺っていました。みんな見入っていました。上映が終わり、監督が登場すると拍手が起こりました。多くのニューヨーカーが、質問の手を挙げました。

これまで、世界の多くの教育機関では『THE COVE』の上映機会の方が圧倒的に多かった。世界中で「ニッポン人、野蛮だ、イルカかわいそう」とホットドッグ食べながら言われていました。そのソーセージは牛か、豚だ。

今回は米国の政財界、学会、法曹界をリードする卒業生を数多く輩出した名門コロンビア大学での正式招待の上映会。これがどれだけデカイことか。来場者のニューヨーカーが監督にどんどん質問している。質問の内容はどうでもいい。問題提起した作品で、疑問を持ってくれている。

でも、その中で僕が感じたのは、多くのアメリカ人が好意的に思ってくれている、ということ。もちろんある程度作品の内容を知った上で来場しているアメリカ人。その時点で、彼らイコール世間一般のアメリカ人とは言えないとはいえ、それでも積極的に、意見を話し、意見を聞いている。

上映会が終わり、監督と握手しました。本当にありがとう、と言ってくれる監督に、僕の方こそ、何も力になれず、その上でこんな体験をさせてもらった。

監督から「はい、おみやげ」と渡された日本製の洋菓子を見て「なんだ、クジラじゃないんだ」とつぶやくと、「ワシントン条約で持ち込めないよ」と一言。じゃあ、なんで前回、渡してきたんだよ。

そういえば、東京で打ち合わせした最終日の夜、ひとりで渋谷のくじら専門店に行ってきました。監督に協力する僕に、周囲の人は「クジラ漁という日本の文化に口を挟む海外の人って許せないですよね!」とか、あるいは「ベジタリアンの私からすると、やっぱりイルカもクジラもかわいそうだわ」と色々な意見を言ってきます。

でも、実は、僕個人は、捕鯨の賛否はどうでもいいんです(いや、くじらの唐揚げは好きだけどね)。賛でもないし、否でもない。どっちかっていうと賛かもしれないけど、人に話せる理論武装ができているわけでもない。

監督自身も「この映画は単なる捕鯨問題ではなく、歴史認識や国際会議、条約、人種・宗教などの現在起きているさまざまな国際問題までも含んでいるんです」と言います。そう、「クジラ食っちゃっていい」、「食べちゃダメ」な単純な二元論の話じゃない

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