アルペンの逆襲。スキー客激減もアウトドア進出で復活の大逆転劇

 

新しいヒット業態に社内の空気も明るく

改めて言うまでもなく、同社は1990年代のスキーブームの主役を張った企業で、93年の『ロマンスの神様』を皮切りに2002年まで毎年、ミュージシャン・広瀬香美さんの曲をキャンペーンソングに採用したCMにより、多大なインパクトを日本社会に与えた。

しかし、日本経済の長期にわたるデフレもあり失速。既に同社のウィンタースポーツの売上比率は5%台にまで落ちている。神田神保町の「アルペン 神田店」も16年2月に閉店。近年は気候変動により、スキー場が雪不足に悩まされる年も多く、18~19年のシーズンもスキー用品の販売は低調だった。

日本のスキー・スノーボード人口は、長野オリンピックが開催された1998年の1,860万人をピークに、17年には530万人へと3割以下にまで激減してしまっている(日本生産性本部「レジャー白書」より)。柏のアウトドア旗艦店のディスプレイを見ていると、もうアウトドアの一部としてスキー用品が位置づけられている。時代が違うということだ。

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スノーウェア売場。「スキーのアルペン」の十八番

ゴルフもまた、近年は若手ゴルファーの活躍でやや見直されてきたものの、2001年の1,340万人をピークに、17年には630万人と半分以下に激減した(同)。16年の550万人が底で、最悪は脱したと見る向きもあるが、厳しい現状に置かれている。アルペンにおけるゴルフ用品の売上は3分の1を超え主力となっている。

そればかりでなく、野球、サッカー、テニスなどの競技スポーツも部活を中心とした参加人口の低迷が続いており、好調なスポーツアパレルやシューズの売上で支えられてきた。時代に合った新たな業態を生み出し成長させる、構造改革は必然の流れであった。

同社の2019年6月期第3四半期(18年7月~19年3月)の決算は、売上高1,650億3,100万円(前年同期比0.5%減)、経常損失8億8,800万円。創業よりの主力であったスキー用品、近年力を入れてきたゴルフ用品の不振、人件費の上昇、売上を確保するための大幅値引き、1月19日に発表した早期退職者募集に伴う退職特別加算金の計上などの要因により、減収かつ赤字となってはいるが、アウトドアという新しいヒット業態が生み出されたため、反転への道筋が立ち社内の空気は明るい

柏のフラッグシップストアを実際に訪問してみると、アウトドアに関する体験型の展示が行われており、アウトドアの楽しみ方がさまざまに提案されている。店内は3層になっており、1階はキャンプ用品、2階はタウンユースとアウトドアを結ぶアーバンスタイルのアパレル、3階は登山用品がメインとなっている。

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柏店オープンを知らせるチラシ。「アウトドアの聖地」と謳っている

1階の出入口を入った場所には、バーベキューなど野外の飲食で使うテーブル、椅子などが休憩スペースを兼ねて展示され、実際に座って居心地を確かめることもできる

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アウトドア用品をインドアでも、という提案

近くには調理用具の売場も配置され、トータルでバーベキューの風景がイメージできるようになっている。また、住宅のインテリアとしても活用できるように提案されていることが、わかってくる。

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1階の調理器具売り場

また、1階でメインとなっているウッドデッキの上にあるテントの売場では、330種類以上の商品数を揃え、多くの商品がテントを張った状態でディスプレーされており、キャンプ場の雰囲気を再現している。希望者は店員が立ち会って自分でテントを張ってみることもできる。このように購入に先立って実際に使用して体感できるサービスが、体験型ショップらしい他店と違う大きな売りである。

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1階テント売場。実際にテントを張って試すことができる

2階には、子供たちが遊べる滑り台などが設置されたキッズコーナーも設けられ、ファミリーで納得がいくまでショッピングができる環境が整備されている。子供服のスペースも大きく割かれており、近年アウトドアショップで子供服が買われる傾向が強まっているが、その期待に応えている。

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子供用の自然観察の参照とする図鑑ばかりか天体観測用の望遠鏡も置いてある。

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自転車やオートバイに乗るのに適したストレッチ素材の防寒、防水服のラインナップも豊富だ。アパレルのラインアップとして、ジョギング、ランニング用のほか、女性に人気があるフィットネス、ヨガで着用する服も充実している。

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