「以心伝心」「目は口ほどにものを言う」などの言葉が表すように、わが国では言葉にするよりも察することを美徳とする傾向があります。そのため、本来大切なはずの「きちんと理解したのち言語化して伝える」という手順が疎かにされてきました。今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』では著者で飲食店コンサルタントの中西敏弘さんが、企業理念を言語化して伝えることの重要性を説いています。
「つもりくん」を作らないようにするには、「言語化」という作業が重要!
よく、「分かっているんだけど、うまく話せない!(伝えられない)」という人がいるが、それは、実際は“理解してないから伝えられないだけ”である場合がほとんどだ。
もしきちんと理解していれば、例えをだしたり、言葉を変換して伝えられることができるはずだからだ。
そして、何より怖いのは、「これを良し!」とするような社内風土があると、社内に「分かったつもり」の「つもりくん」スタッフをたくさん作ることになる。
そうすると、仕事が常にブレることになる。
なぜなら、すべて、「つもり」、で仕事をするからだ。だから、必然的に質も低下するし、間違った理解をしたまま進むから成長もいないし、成果もでない。
このケースで良く見受けられるのが、「理念」についてである。
「君は、俺の言わんとすることが分かっていると思うんだ…」
「君は、理念のことは、分かっていると思うんだ…」
ということばを社長さんから聞くことがあるのだが、得てしてこういう人ほど、僕から見ると、「彼は、全然、社長のことも理念も分かっていないのになあ…」と思うことが多い。
というのは、勉強会で理念の掘り下げの時間をとる事が多いのだが、彼らはこの時に、ズレた答えをすることが多いからだ。
このズレた答えを聞いて、「君の言わんとすることは分かるよ…」と社長さんはフォローするのだが、僕は、このスタッフは理念を全く理解できていないといつも感じている。
なぜなら、冒頭で述べたように、理解していれば、必ず「ことば」で人に伝えることができるからだ。
理念というのは、すごく感覚的な部分もあって、この感覚だけを大切にされる社長さんもいる。もちろん、感覚的なことも大切だとは思うが、理念というのは、「実際の現場でどう活かすか?」ということが最も重要な事である。でなければ、理念を掲げる意味がない。
理念は、“現場でどう活かすか、活用するか”が大切だということだ。
そのためには、理念を何度も何度もスタッフに経営者自らが語ることも大切なのだが、「理念に基づいた行動とはこういう行動だ!」という具体的事例を「言語化する」ことも必要だ。
こういった理念事例集のようなものがあると、自分の行動が「理念に沿ったものかどうか」が社員にも理解しやすくなるし、社員スタッフもアルバイトにより伝えやすくなるはずだ。
このように、飲食店の仕事において、「言語化」するという業務はすごく大切な業務なのだ。また、飲食店のスタッフは「ことば」にすること、伝えること、話すことが非常に苦手で、これが、仕事の質の低下につながっている傾向が強い。
この「言語化する」ということに会社全体で取り組まなないと、会社と社員間、社長と社員間、社員とアルバイト間で、大きなギャップ、たくさんのギャップを生むことになる。
さて、あなたの会社でも「つもりくん」を作り出さないようにするために、「言語化」するという業務に今以上に取り組んでみてはどうだろうか?
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