読売の紙面に透ける財務省の影。各紙の参院選「争点」を読み解く

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いよいよ切って落とされた、参議院選挙戦の火蓋。公示前日に行われた党首討論での舌戦が各メディアで報じられましたが、新聞各紙は今回の参院選の争点・論点をどのように伝えたのでしょうか。ジャーナリストの内田誠さんが、自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で詳細に分析・紹介しています。

参院選の争点・論点を新聞各紙はどう伝えたか

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「首相 消費増税 10%後は10年不要」
     「野党 家計 消費重視の経済政策に」
《読売》…「首相 消費税『10年上げず』」
《毎日》…「首相『再増税10年不要』」
《東京》…「改憲問う」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「暮らし・憲法 舌戦」
《読売》…「野党『年金』に集中砲火」
《毎日》…「改憲 自公に温度差」
《東京》…「年金ビジョン 真っ向対立」

プロフィール

選挙の争点・論点について各紙がどう書いているか、ピックアップします。

■「安倍1強」に歯止めを■《朝日》
■さらなる負担増と給付抑制を■《読売》
■与党間にも温度差■《毎日》
■三権分立の危機■《東京》

「安倍1強」に歯止めを

【朝日】は2面の選挙特集で、党首討論会の内容を網羅的に紹介している。大見出しは「暮らし・憲法 舌戦」としていて、続く記事の前半には「野党、年金・増税で攻勢」「首相は野党共闘を批判」、後半には「首相、改憲で国民に秋波」「野党、揺さぶりに不快感」としている。

「暮らし」で総括されるのは、「年金消費税」の2点。

野党側からの追及で説得力があるとみられるのは、1つは国民民主党・玉木代表の議論で、「公的年金だけで収入100%の人が51.1%、生活が苦しい人も半数を超えている」という指摘。たまたま前日に紙面を賑わせたものだが、貧しい「年金生活」のリアリティを突きつけている。「貧困高齢者」という概念化も重要。

もう1点は共産党・志位委員長の主張。マクロ経済スライドで国民の年金を実質7兆円減らすという安倍政権の政策の変更を求めている。「100年安心」の意味合いを有権者が知る上で重要な一歩。

記事は、こうした議論に対して安倍氏は「野党共闘と個別政策との整合性を問う形で逆襲する」として、例えば枝野氏は、マクロ経済スライドを「民主党政権時代もずっと維持してきた」ではないかと。

改憲についてはほとんど堂々巡りの体で、新しい論点はないが、参院選の選挙結果如何ではやにわに動き出す可能性があると思われる。安倍氏は「国民民主党の中にも憲法改正に前向きな方々もいる。そういう中で合意を形成していきたい」と発言していて、国民民主党に手を伸ばそうとしている。安倍氏としては、改憲手続きの進行の各段階で抵抗する力を分散減衰させる作戦だろう。

《朝日》12面社説のタイトルは「安倍一強に歯止めか、継続か」。政権選択の選挙ではないが、今回の参院選、「その結果には政治の行方を左右する重みがある」として、21年9月までの自民党総裁任期を得た安倍氏による「安倍1強政治」に歯止めをかけて政治に緊張感を取り戻すのか、それとも現状の継続をよしとするのかが問われているとする。勿論、《朝日》は「歯止めを掛けるべきだ」といっていることになる。特に強く批判しているのは、民主党政権時代を引き合いに「混迷の時代に逆戻りしていいのか」と繰り返す、安倍氏の物言いについてだ。「現下の重要課題や国の将来を語るのではなく、他党の過去をいつまでもあげつらう姿勢は良識ある政治指導者のものとは思えない」とまで言っている。

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