三権分立の危機
【東京】は2面の解説記事「核心」で討論会について解説、見出しには、まず大見出しが「年金ビジョン 真っ向対立」となっていて、続いて「与党 将来のため給付抑制」「野党 今苦しい高齢者優先」と与野党が対比されている。
この見出しは秀逸。焦点は「マクロ経済スライド」の是非ということになるだろう。
安倍氏はこの仕組みがなければ「40歳の人がもらう段階になって、年金積立金は枯渇してしまう」としたのに対して、共産党・志位委員長は「国民の暮らしが滅んだのでは何にもならない」としてマクロスライドの廃止を要求。立憲民主党・枝野代表も「共産党の提案を含め、広範な議論が必要」と言っている。
5面の社説はタイトルが「三権分立の不全を問う」となっている。他紙とは明らかにニュアンスを異にしているようだが、官邸に過度に権力を集中させてきた「アベ政治」をこのまま続けさせて良いのかという論点になっている。その意味では《朝日》の社説に通ずるものがある。
しかし、社説の前半は改憲について。「改憲は国民の幅広い合意に基づいて行われるべきである」として、「改憲しなければ、国民の平穏な暮らしが脅かされる切迫した状況でないにもかかわらず、党是だからと急ぐ必要がどこにあるのか」と疑問を呈している。その上で、真に問われるべきは改憲ではなく、「安倍政権下での民主主義の在り方、三権分立の危機ではなかろうか」と転じて、標題の内容が出てくる。
社説子の理解では、伝統的な「官僚主導」を「政治家主導」に変えた政治改革の結果、首相官邸への権力集中が過度に進み、安倍政権の下でそれが顕著になったということになる。その典型が「森友・加計学園を巡る問題」で、行政判断が首相らへの忖度で歪められたということになる。内閣人事局によって官邸が幹部官僚の人事権を掌握し、国会は国政に対する調査と行政監視の機能を果たしていないと。
思うに、こうした認識を元に有権者に投票してもらうには、かなりたくさんのことを系統的に思い出してもらう必要があるのだが、その役割は誰がどのように果たしていけるものなのか。新聞は影響力の点で衰微しつつあり、テレビはそもそも「忘却」のための刺激増幅装置のようなところがある。せめて街頭の演説や、あるいはネット言論の中で、繰り返し、記憶を呼び覚ますようなことをしなければ、選挙自体、その役目を果たしていくことが難しくなってしまう。
image by: 自由民主党 - Home | Facebook