参院選ダークホース、山本太郎「れいわ新選組」の人気は本物か?

 

小沢一郎氏の自由党が国民民主党と合流したのを機に、山本氏は一人で「れいわ新選組」を旗揚げした。選挙のための寄付を募ると、みるみる資金が集まってきた

これまでに寄せられた額は驚くなかれ約3億40万円(2019年7月12日時点)。自らを含め10人の候補者を立てることができたのも、そのおかげだ。

東京選挙区には沖縄の創価学会壮年部野原善正氏を擁立して、山口那津男公明党代表に真っ向から戦いを挑むかたちにした。

野原氏は7月14日、創価学会本部前で演説。「公明党は自民党と連立を組むうちに権力のうま味に浸り、今や、池田先生の平和への思いを忘れてしまっている。立党の精神に戻ってもらいたい」と訴えた。

マイクを握る山本氏のパフォーマンスは聴衆の心をひきつけている。

「あまりにも壊れすぎている。今のこの国は。2万人の方が自殺されている。自分は胸を張って生きててもいい存在だと、心から自分を肯定できる方って、どれくらい、いますか」

「いつだって言われる。あなたが何の役に立っているのか、会社の役に、社会の役に立っているのかっていうことを、突きつけられる。生産性で人の価値を測るなんてあまりにもえぐい世の中ですね。だからみんなが生きることを諦めたくなる。それを変えたい」

一人一人が価値を認められる社会に変えたい。理念を無駄のない短いフレーズでテンポよく伝えたあと、ひときわ声をはりあげた。「それを変えるために選挙があるんじゃないのか!ってことなんですよ」

「れいわ新選組」の政策は究極のバラマキともいえる。奨学金チャラ、全国一律最低賃金1,500円、デフレ脱却給付金一人あたり月3万円…。しかし、根底にあるのは弱者への目線だ。

財源をどうするんだと当然、突っ込まれる。その答えは「新規国債を発行する」と明快である。

「足りない分野と人々に大胆に、財政出動を行う。生活にカネをまわせば経済成長し、税収が増える」と主張する。ただし、国債発行はインフレ目標2%に到達するまでと、リミットをつけた。

財務省が目をむくだろう。これ以上国の借金を増やし続けたら、国家財政は破たんするという、従来からの論理で多くの経済学者やアナリストから攻撃されるのは必定だ。

山本氏の政策には、MMT現代貨幣理論の影響が色濃い。

自国通貨建てで政府がいくら国債を発行し、財源を調達しても、一定のインフレ率以上にならないようにコントロールすれば、財政赤字を気にする必要はないという主張だ。

国債を乱発しながらも、インフレにならないどころか、デフレ状態が続く日本でそれが実証されているとして、ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授らが提唱している。

主流経済学者や財務当局は異端視しているが、日本でも評論家の中野剛志氏や三橋貴明氏、藤井聡京大教授(前内閣官房参与)らこの理論の信奉者は少なくない。経済学のコペルニクス的転回が起こるのだろうか。

山本氏は、説明を要するMMTへの言及を選挙演説では封印し、儲かっている大企業や富裕層からの税収を増やすと、他の野党に足並みを揃えている。

れいわ新選組の人気がどこまで本物かはわからないが、安倍政治に不満を抱きながら黙してきた層の掘り起こしで、驚くべき結果が出ないとは限らない

IMG_5671

メディアの伝えるところでは、自公優勢は揺るがぬらしい。だが、最終盤の逆転はよくあることだ。安倍政権のこれ以上の暴走を食い止めるには、野党勢力がこの選挙で予想を超える結果を出して衝撃を与えるしかない。

image by: MAG2 NEWS

新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国家権力&メディア一刀両断 』

【著者】 新恭(あらたきょう) 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 木曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 参院選ダークホース、山本太郎「れいわ新選組」の人気は本物か?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け