快進撃の会員制スーパー「コストコ」に見え始めた、限界の兆し

 

試食販売と新刊雑誌の割引という強み

一方で、あまりスーパーで売られていないようなこだわりの商品が入荷することもある。元祖チーズタッカルビの「市場タッカルビ」の冷凍食品が売られていたとの情報もあり、決して安くはないが買う価値がある商品も陳列されている。それを探し当てられる目利き力のある人には、面白い店である。

コストコの楽しさとしてよく挙げられるのが、試食販売である。休日の日中に行くと、売場にずらりと販売員が並んでいて壮観ですらある。試食に並ぶ行列が長い商品もあり、人気の商品を幾つも食べ歩くのには入場者が殺到するグルメフェスに行くような忍耐が必要だ。

試食販売員は、例外もいないわけではないが、総じてフレンドリーだ。百貨店のデパ地下などでは、試食すれば必ず買わなければならないといった厳しいオーラを放つ販売員も珍しくないが、コストコにはまずいない。商品の調理法、保存法などを、丁寧に説明してくれ、商品知識が豊富で安心感がある。調理も肉や魚を焼いた時の火の通り具合が、ちょうどいい塩梅のことが多く、技能が高い。

しかも、往々にして試食の分量が半端なく多い。巻き寿司1本、パン1個などはざらにある。無料の食事と考えた方がいいかもしれない。ステーキ、チーズケーキ、サラダ、コーヒー等々、いろいろあるので、高い会費を払っても、月に1度ずつファミリーで通えば、1食分ずつくらいは十分に取り戻せる計算になる。子供たちは試食が大好きだ。屋台のような臨場感が気分を高揚させるのであろう。

ある意味、年会費を払えば何度も無料で立ち食いができる、飲食のサブスクリプションとも言えるビジネスモデルになっている。これも、コストコが人気の理由だろう。

コストコの試食は、クラブ・デモンストレーション・サービシスという、コストコ店内のマーケティングサービスに特化した会社が担っている。このようなパートナーに恵まれていたのも、コストコが発展し、日本でも定着できた要因の1つである。

コストコの強みとして、新刊の雑誌が割引になるサービスも好評だ。コストコに行くと多くのジャンルの雑誌が置かれている。雑誌だけを買うと割引されないが、他の商品と一緒に買うとレジで200円の割引が適用されるのだ。ただし、対象となる雑誌のみが割引になり、薬局、メガネ売場、フードコートなどといった個別のレジでは割引にならないので、よく注意する必要がある。

書店やアマゾンのような通販にもない、ポイント還元ではない、新刊の割引サービスである。ファッションや暮らしに関する婦人雑誌を買うのを楽しみに、コストコに足繁く通う女性客も多い。

安価でボリュームの多いフードコートもコストコの魅力の1つだ。千葉市の幕張倉庫店と、広島市の広島倉庫店では店の外にフードコートがあるのでコストコの会員証がなくても誰でも気軽に利用できる

幕張倉庫店はイオンモール幕張新都心という超巨大商業施設に隣接しており、イオンモール利用者もよくコストコのフードコートを使っている。平日でも常時行列ができるほどで、イオンモールのフードコートより人気があるのではないかと思えるほどだ。

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ピザ、ホットドッグ、プルコギベイク、アサイーボール、チーズバーガー、スープ、サラダ、ソフトクリーム、スムージー、コーラやコーヒーなどの飲料などが売られているが、アメリカンなビッグサイズで提供される。全般に若者向けな濃い味付けのものが多いが、コストパフォーマンスが優れているのは明らか。ホットドッグはお代わり自由のソーダーが付いて180円(税込、以下同)だし、ピザは直径約45cmものサイズ(1,580円)で6分の1のスライス(300円)でも、空腹がかなり満たせるほどである。

コストコに行けば、商品が山積みになったカートを席の近くに置いて、フードコートで食事をする家族をよく見かけるが、子供たちはキャンプに出掛けた時のような表情ではしゃいでいることが多いように見受けられる。アメリカの消費文化が直輸入されているのでそれだけ非日常度が高いということなのだろう。

まとめると、消費者にしてみればコストコに行く行為は、買物というよりも宝探しに近く、試食が食べ放題の楽しみもあって北米の異文化に触れるレジャーとして成立している。そこが、安い、品揃えなどといった日常の利便だけで優劣を判断されて、日本人の嗜好をつかみ切れていない弱点が明るみに出てしまう、他の外資系スーパーとの違いになっている。

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