コストコが成長の壁にぶつかる日
順調に見える、日本のコストコの事業展開であるが、暗雲が広がる兆しもある。コストコでは、滋賀県栗東市に出店を計画し市と協議を進めてきたが、地域住民の反対もあり、断念を余儀なくされた。6月5日に栗東市役所が発表した。栗東市役所によれば「もとから車の交通量の多い生活道路に面した立地ですし、激しい渋滞が避けられないのなら仕方ないですね」とのこと。
出店を予定していた19haの土地は、田んぼが広がっており、農業を振興する市街化調整区域に入っていた。それを市街化区域に変更しなければ、大規模な商業施設は建設できない。どこをまちにする市街化区域に組み入れるかは10年ごとに見直されるが、今回は地権者らの熱心な誘致活動もあり、市としては変更する準備を進めていたという。
ところが当該区域は、隣の守山市との市境にも近く、守山市の側も難色を示していた。調査の結果、コストコ出店により最大1.7倍に車の交通量が増えるというので、反対の声が大きくなった。コストコや地権者、栗東市では建設したくても、地域住民や隣接する自治体との調整がつかなければ、出店できないということだ。
実際のところ、ロードサイドでも出店しやすい市街化区域は、日本全国もう既に他の店が出店してしまっている。市街化調整区域を市街化区域に変更しなければならないような、難しい土地しか残っていないから、出店を加速したくてもできないのである。ここにコストコの成長の限界があるようだ。
一方で、地域の小規模スーパーでは、定期的にコストコの人気商品を店内で販売する、コストコフェアを開催する動きが広がっている。コストコに行きたくても高い会費に尻込みしていた人や、コストコの店舗まで遠く高速道路代が高くつくと感じている人に好評で、多くのケースでリピートされている。
東京都板橋区に本社がある「よしや」は板橋区を中心に12店を展開するが、2ヶ月に1度くらいのペースで、各店にてコストコフェアを開催している。コストコには法人会員として登録し、本部に開催日を連絡して商品を取りに行く。コストコの提携工場も一度には大量の商品をつくれないから、まとまった数を仕入れるなら、本部との連絡を密にしておかなければならない。別に法人として大量に発注したからといって、仕入れ代は安くならない。
コストコから仕入れた商品は、1割から2割の利潤を乗せて、店頭で売る。コストコも滋賀県栗東市のケースのように、出店を断られてしまうと、そうそうは店舗を増やせない。とすれば、地域に密着したローカルスーパー、特に食品スーパーの販売力に期待していくしか、成長の芽はないだろう。
これからアマゾンをはじめとするネット通販もさらに台頭してくる。いつまでも現在のような店を構えているだけで顧客が集まってくる殿様商売を続けられるのか。その時に、ローカルスーパーに頭を下げて商品を売り歩く営業ができるのかどうか。コストコが成長の壁にぶつかる日も近いのかもしれない。
Photo by: 長浜淳之介