知ってた?「サラリーマンは厚生年金だけに加入している」はウソ

 

そこで、昭和61年4月1日からは定額部分を廃止して、いよいよ国民年金の出番となったわけですが、ここで2つ問題がありました。それは定額部分の計算式と、国民年金の老齢基礎年金の計算式が違う。計算すると定額部分のほうが若干多くなる

例えば、国民年金に強制加入である20歳から60歳までの間に厚生年金(または共済組合)に加入したのが360ヵ月だったら、

  • 1,626円(令和元年度単価)×360ヵ月=585,360円

じゃあ、国民年金の老齢基礎年金の場合は

  • 780,100円(令和元年度満額)÷480ヵ月×360ヵ月=585,074円

定額部分は585,360円で老齢基礎年金は585,074円となって、旧年金時代の定額部分のほうが金額が高くなりましたね。あれ!?じゃあ旧年金時代のほうが年金額が高いやん!今の国民年金は損してる!って思いますよね。

だけど、老齢基礎年金を貰う時に年金額が低下してしまうのを防ぐために、その定額部分と老齢基礎年金の差額を埋めるために差額加算で埋め合わせをするのです。さっきの定額部分585,360円で、老齢基礎年金が585,074円なら、差額の286円が差額加算となって支給される。

そして2つ目の問題が、厚生年金(または共済組合)と国民年金の加入期間の違いの問題。厚生年金や共済(平成27年10月からは厚生年金に統合)は国民年金のように20歳から60歳までの480ヵ月という制限はなく、例えば中学卒業後の15歳から厚生年金に加入したり、定年後も働くとすれば最大70歳まで加入できます。そうすると加入した年齢によってはズレが生じますよね

例えば50歳から70歳までの20年間は給与50万円で厚生年金に加入したけど、国民年金の老齢基礎年金には50歳から60歳までの10年間しか年金額には反映しない。厚生年金加入中は何歳であろうが、みんな同じ保険料率18.3%(実際はこの率を労使折半して支払う)を納めるのに、60歳前と後では老齢基礎年金に反映したりしなかったり…。60歳後も今までと変わらない厚生年金保険料額を納めてるのに老齢基礎年金額には反映せずに、支給される年金は報酬比例部分だけだからなんだか不公平な気分ですよね。

でも大丈夫。そこも差額加算として埋める。さっきの50歳から70歳まで厚生年金に加入した人は、1,626円×240ヵ月-780,100円÷480ヵ月×120ヵ月=390,240円-195,025円=195,215円が差額加算となる。

まあ、給与(標準報酬月額)は平均で50万円で働いたら、報酬比例部分は

  • 50万円×5.481÷1,000×240ヵ月=657,720円

差額加算は先ほどの

  • 1,626円×240ヵ月-780,100円÷480ヵ月×120ヵ月(20歳から60歳までの厚生年金期間)=195,215円

老齢基礎年金は、

  • 780,100円÷480ヵ月×120ヵ月=195,025円

65歳からの年金総額は、

  • 老齢厚生年金(報酬比例部分657,720円+差額加算195,215円)+老齢基礎年金195,025円=1,047,960円月額87,330円

注意

差額加算は老齢厚生年金の部類。60歳から70歳までは国民年金には強制加入にはならないから、老齢基礎年金額には反映しないけどその代わり差額加算(経過的加算)として補う事になるから損はしない。

ちなみに差額加算の金額195,215円を見てみると、国民年金に120ヵ月間加入したのとほぼ同じ効果がある。国民年金に120ヵ月加入して国民年金保険料を納めると、780,100÷480ヵ月×120ヵ月=195,025円になるから国民年金を納めた効果とほぼ同等の効果がある。

というわけで定額部分というのは昭和61年4月にもう廃止されて終わった年金ではありますが、従来と新しい年金との違いがあるので、今もなお「経過的にその差額を埋めて年金額が従来より下がらないようにする措置として経過的加算(差額加算)が計算されて支給されている。

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