驚き?でも納得。妊婦のダイエットが子どもを太りやすくする理由

 

ここで視点を変えてみる。長距離ランナー(つまり、かなりの痩せ型)の脂肪細胞の大きさは通常サイズの半分以下である。ヒトの細胞は遺伝子レベルでそれぞれ固有の大きさを与えられていると考えられている。これに基づけば、もっとも縮小した(これ以上は小さくならない)この大きさこそが本来の脂肪細胞のサイズということとなり、結果として普通体型の人間も既にその脂肪細胞レベルでは肥大化しているということになる。

勿論「固有」という言葉の定義にもよろうが、健康的に生活している人のほとんどが属す群が既に固有の大きさではない(本来のあり方ではない)という物言いにはやはり違和感がある。ヒトの体は必要最低限でデザインされている訳ではないからだ。効率としては理想的な必要十分ですらない。どちらかと言えば、不必要十分である。このマージン確保の傾向は生物として「もしも…」に備えているということに他ならない。

面白いデータがある。昨今ハリウッドセレブなどの美しい妊婦姿が写真で紹介される機会が多くなったせいか、妊娠した女性の間でダイエットが流行したことがあった。生まれた子供の追跡調査をした結果、両親の体型に似ず肥満傾向があることが分かった。これには以下のような解釈がなされている。

胎児がお腹にいる間、母親のダイエットにより必要最低限の栄養しか胎児には届かなくなる。すると胎児は自分が生まれ出ようとしている世界は食糧の乏しい飢餓の世なのかもしれぬと判断し、ほんの僅かな栄養でも効率よく脂肪として蓄えられるような体質に自分自身を変化させる。ところが生まれてみると飢餓とは程遠い飽食の世である。結果、胎児の時の適応が逆にあだとなり太り易くなってしまうのである。実に賢く、それが故に、実に皮肉な話である。

当たり前のことだが、同じような食生活を送っていても、太る人もいればそうでない人もいる。体質と言ってしまえばそれまでだが、一方でわざわざダイエットをしてまでデブを生むのは如何にも馬鹿げた行為のように思える。

今では妊娠中に、アルコールやタバコ、カフェインを摂取する女性はまずいない。胎児に悪影響があることが分かっているからだ。同様にダイエットも避けるべきである。今の時代では、一生のうち一度か二度、あるかないかのことなのだから、この間くらいは自分の体型を一切気にせず、気楽に過ごしたらどうだろうか。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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