京都ミステリー。龍安寺の石庭へ行く前に知っておくべき3つの謎

 

遠近法の謎

あまり知られていないことですが、龍安寺の石庭の平面は平らではありません。見てわかるほど傾いてはいません。でも正面向かって左奥が低くなっています

もちろんこれは排水を考慮した工夫でもあるでしょう。しかし、西側の壁も手前から奥に向かって50センチほど低く造られています。これは視覚的に奥行を感じさせるための工夫です。遠近法を利用し狭い庭を広く見せる高度な設計手法が使われているのです。高さ180センチの土塀は油土塀です。長い年月を耐えるために頑丈な作りになっています。

龍安寺が創建されたのは室町時代です。それまでに造られた日本の庭園や絵画を見る限り遠近法の技法は使われていません

遠近法はヨーロッパのルネサンス期に主に採用されはじめた技法です。龍安寺が建てられた時期は日本にキリスト教が伝わったばかりの時でもあるので、キリシタン大名経由で龍安寺を作庭した人に伝わった可能性があります。江戸時代初期に造営された二条城、桂離宮、修学院離宮、曼殊院などは随所に遠近法が使われています。これらの庭に関わっていたのは茶人作庭家の小堀遠州です。彼は利休七哲の1人・古田織部に師事した茶人で「綺麗さびを確立させた人物としても有名です。現在の京都(日本)の美意識は江戸寛永期に花開いたこの「綺麗さび」の価値観に基づいたものが根底にあるように思います。龍安寺の石庭の設計にはもしかしたら小堀遠州や遠州を知る人物が関わっていかも知れません。

石庭以外の龍安寺の魅力

侘助(わびすけ)椿

方丈の東庭の横に豊臣秀吉が絶賛したといわれる日本最古の侘助椿があります。2月上旬から3月末が見ごろです。桃山時代に「侘助」という人が朝鮮から持ち帰ったのでこの名がついたと言われています。以後侘助椿は利休も好んで茶道の挿し花として用いられるようになりました。

手水鉢ちょうずばちつくばい

龍安寺には銭形をした知足のつくばいがあります。中央の水穴を口の字に見立て上下左右に「」の四文字が刻まれています。それぞれの文字に口という字を加えると「吾(わ)れ、唯(た)だ、足ることを知る」と読むことができます。これは釈迦が説いた知足の心を図案化したもので、徳川光圀が寄進したものといわれています。つくばいは茶室などに入る前、手や口を清めるための手水を張っておく石です。「吾唯足るを知る」という意味は石庭の石を一度に14個しか見ることが出来ない事を不満に思わず満足する心を持つことの教えです。今ある命や健康、五体満足な身体など与えられているもの、すでに持っているものに感謝しなさいということです。完璧は目指さなければならない究極の目標であっても、それを求めてはいけないということなのかも知れません。

いかがでしたか?

今回は世界遺産・龍安寺の石庭に隠された謎やメッセージを中心にご紹介しました。京都のお寺などには少なからず建築様式や、建築の意匠、置かれているものやその配置などに意味やメッセージがあります。小さなことに気を配りながら色々観察していると、人生に対するヒントや気づきが見つかったりします。価値観が大きく変わり、生きていくのが楽になったり、新しい自分との出会いに驚くこともあるでしょう。京都の魅力はそんなところにもあるのだろうと思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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