取り上げたのは中日新聞だけ。それも西さんへの取材はおろか、具体的に知事が指摘した危険性に言及したものでもありませんでした。単に「知事がこんな話をした」という、おざなりの「出席原稿」(ちゃんと仕事をしているというアリバイ原稿)として処理されてしまったのです。
この問題に火が付けば、下手をするとリニア中央新幹線計画は頓挫するおそれさえあります。そうでなくとも、乗客の安全対策について新たな工事などが必要となるでしょう。
少なくともジャーナリストであれば、西さんに取材し、コラムに書かれたスイスの具体例などを確認し、JR東海に取材するでしょう。さらに、一定の乗客安全対策が施されている青函トンネルの安全対策についてJR北海道にも聞くはずです。残念なことに、その形跡はいっさいありませんでした。
私はJR東海のドン・葛西敬之名誉会長とは1991年以来の付き合いですし、その関係からもリニア中央新幹線には成功して欲しいと思っています。静岡県と対立している大井川の流量減少問題も、良い形で決着して欲しいと願っています。
しかし、ことは乗客の安全の問題です。少しでも疑問が残るようなら、その点を解明しなければなりません。JR東海が気づいていないなら、問題を指摘し、解決に向けて動かすのもジャーナリズムの仕事ですが、そういう問題意識がまったく感じられませんでした。
実を言えば、西さんのコラムはメルマガ『NEWSを疑え!』の読者である少なからぬ大手マスコミのベテラン記者が目にしているのですが、コラムが出てから3か月以上も経つのに反応はゼロでした。
これをジャーナリズムの劣化と言わずして何と表現すれば良いのでしょうか。ボーッと記者発表を垂れ流しているんじゃねえ!と怒鳴り上げるようなデスクなんて、もはや、棲息していないのでしょうね(苦笑)。(小川和久)
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