その表れに、今週プーチン大統領は特別機でモスクワから中東各国を訪れる際、まずシリア上空を飛行して様子を眺め、その後、サウジアラビアに入って、ロシアのビジネス界のdelegationとともに、ロシア企業とサウジアラビア王国の経済的な結びつきの強化に乗り出しています。
サウジアラビアとしては、ロシアの輸出品である原油や天然ガスには魅力はないですが、航空宇宙産業の技術や、核兵器を含むロシアの軍事技術などを得たいとの考えから、最近は非常に密接度を増しています。
その裏には、先日のサウジアラビア東部の原油施設が同時に攻撃された際、アメリカから買わされたシステムが全く役に立たず、今後は、対イランの観点からも、自国での武器開発や核兵器の開発に乗り出そうとの意欲があります。そのため、今回の訪問において、まず航空機リース事業を共同で立ち上げることに合意しています。ここにもロシアの影が濃くなってきています。
そしてもう1か国がUAEです。こちらも同じくロシアの軍事技術の導入と協力に魅力を感じており、その引き換えにロシアの鉄道整備への出資を行う旨、発表しています。つまり、中東地域におけるロシアの影響力は、低下するどころか、一段と強まっています。
アメリカの勢力が縮小し、かつロシアのプレゼンスが高まる事態に加え、イランとイスラエルの対決姿勢は高まる中、国内の政治的な安定性に大きな懸念があるイスラエルのグリップ力と、出口の見えないイラン情勢、サウジアラビアとUAEの仲違い、そしてクルド人勢力を見捨てることで“安定”へと向かうシリア情勢と、混乱要因に事欠くことない中東地域ですが、そこにISILのリーダーであるバグダディ氏爆死がもたらすことになるだろう予想もつかないほど大きなカオス…。
中東地域がより混乱の度合いを極める中、以前のように欧州各国の介入は期待できず(域内でのいざこざで手いっぱい)、米ロに後押しされた様々な利害が絡み合う状況は、もしかしたら、次の世界的な戦争の火種となるのかもしれません。